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藤塚光男さんの白磁の器 藤塚光男さんの白磁の器 藤塚光男さんの白磁の器

速い。手中の土塊から、ものの30秒ばかりで一枚の皿が取り出されます。轆轤挽きにかけては練達の士。一日に飯碗を2、300個は挽いていたという手技から、使い易い形の器たちが次々と生みだされます。
そんな職人として培った技とともに、穏やかなお人柄を反映したかのような暖かさをたたえる器たち。Feature 012では、藤塚光男さんの白磁の器をご紹介します。
藤塚光男さんは、信長の命をうけて秀吉が一夜で築城したという今浜城のある滋賀県長浜生れ。5人兄弟の末っ子は、絵を描くことが好きな少年でした。大学は法学部に進んだものの、六法全書よりももっぱら美術工芸書に親しみました。藤塚さんの積極性の一面は、『季刊銀花』に文章を見つけた古美術鑑賞家秦秀雄氏に、いきなり手紙を出すという行動に出たところからも伺えます。秦氏からは奥深い骨董の世界を学び、その他にもいろいろなご縁のとりむすびが重なり、法学部の卒業生は、石川県の「九谷青窯」に弟子入りします。
九谷青窯で藤塚さんが取り組んだのは、染付けの食器でした。少しくすんだ呉須でのびやかな線や筆の腹を使って描くダミの手法の湯呑や茶碗。飯碗を日に2、300も挽いていたのはこのころです。結局、11年という長い年月を九谷青窯で過ごしました。そして、ちょっと遅めの独立を果したのは36歳の時。IBMに勤めていたキャリアウーマン美子さんとは既に結婚していました。美子さんは今はマネージャーとして心強い存在です。

築200年の民家を改造して住まいと窯場とショールームが一体となった藤塚さんの城は、京都市の郊外、亀岡に築かれました。
独立したとき、彼には定めたルールがありました。それは、問屋仕事はしない、ということでした。とはいえ、まだ無名の陶工にギャラリーから個展の誘いが舞い込むわけもありません。そこで、藤塚さんは、消費地の工芸店に常設してもらうべく、工芸店巡りを始めます。若い陶芸家たちはよく飛び込みで作品を見せに工芸店を訪れます。こんなとき、彼らがバッグから取り出すのは、数点から多くて10点ほど。重たくてそれ以上は持ち歩きたくないからです。ところが藤塚さんは、6、70点の器を並べて見せるのです。そのため、肩には青痣が絶えなかったといいます。この努力が実り、東京では「花田」「サヴォアヴィーヴル」「桃居」、関西では「ようび」「一客」などの工芸店が扱ってくれるようになりました。どの店も、オーナーの確かな目で上質の陶磁器を扱うことで知られる店です。店が作り手を選ぶように、作り手も販売してくれる店を選ぶ姿勢の大切さがわかります。
仕事の確かさは言うに及ばず、見ず知らずの著名人にいきなり手紙を出す熱意から始まり、相手を圧倒するようなプレゼンテーションをすること。ここに藤塚さんの秘めたる力、自らの手で運命を切り開く心の強さを感じます。
伸びやかな絵の染め付けも日常の器として人気がありますが、今回ご紹介する白磁には、使う材料への強いこだわりを見てとることができます。まず土。ピーンと澄んだ感じの有田の土とは一味違う、やや白濁したやさしい表情のでる石川県の花坂陶石を使います。その上に、九州の天然の柞(いす)の木灰を使った釉薬をかけます。今や柞は年々減少の一途を辿りつつあり、貴重な釉薬だそうです。色や絵付けがないからこそ、作り手の材料へのこだわりや力量をまざまざと写し出すのが白磁の器と言えそうです。
灰釉が生む少し青みがかった柔らかな肌合いをもつ藤塚さんの白磁は、食卓にあがるさまざまに自己主張する器のなかで、オアシスのような役目を果してくれます。奇を衒わないシンプルな形は、どんな料理も受け入れる包容力があります。漆器との相性もいいし、グラスと取り合わせれば、食卓に上品な明るさを添えてくれます。また、日常使いの食器の善し悪しがはっきりわかるのは、洗うときです。形と重さのバランスがとれている藤塚さんの器は、手に収まりが良く、洗い物に余分な神経を使わないですむのも使い手には嬉しいことです。


handmadejapan.comでは17点の器を販売します。食卓に清涼感を与え、簡単なお料理を何倍も映えさせてくれそうな器ばかりを選びました。常に在庫があるとは限りませんが、4種類(FM1〜FM4)の小皿は4点セットから、それ以外はすべて1点からご注文いただけます。また、まれに土のなかの鉄分が黒い小さなほくろのようになって出ることがありますが、これは瑕ではなく“景色”としてお楽しみいただければ幸いです。

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