イギリス南部のサマーセット州で、柳を使って家具を作っているクラフト作家ガイ・マーティン(Guy
Martin)をご紹介する。6月の海外研修旅行で工房を訪ね、短時間ながら彼の人柄に触れ、その自然な生活ぶりと、作っている家具のたたずまいに、自然と寄り添ったもの作りをしている姿が印象的だった。
1946年生まれ。両親ともにアーティスト。彫刻を学び、25年間彫刻家のアシスタントをしたあと、パーナム・カレッジで教え、1984年スタジオを開設。サマーセットの平地に育つ柳を使って、家具を作り始めた。
ガイ・マーティンの家具の特徴は、柔軟性に富み、バラエティ豊かな天然の色を持つ柳の性質を最大限に、そして素直に表現していることだろう。竹と同じく、一年で使用可能な柳を主材料とし、トネリコの下枝を自分で集めて使う。制作過程にも天然のものだけを使い、機械も最小限しか使わない。あえて伝統的な柳を組む手法をとらず、“形を取り除いてゆく”ことで形をつくる。そのミニマリズムを日本的と評されることが多いが、来日したこともなく、本人はクエーカー家具に近いと思っている。
座った人を抱きかかえるような椅子。一見すると座り心地が悪そうだが、掛けてみると、弾力のある柳の背や座面がしっかりと体重を受けとめてくれる。椅子には誰も座っていないのに、ふとそこに誰かがいるような存在感がある。静かで柔和で、心のとげを抜いてくれるような、不思議な家具である。癒しの家具とでも呼べそうである。
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