こうちときよさんは、これと決めたことをとことん追求する女性だ。東京芸術大学で油絵を描く多感な青春時代、下着メーカー勤務時代、14ケ所での子供絵画教室主宰時代、一世風靡した創作人形制作時代、そして、オーストラリアに移住。目下、羊の国で出会った羊毛に魅せられフェルトの帽子作り。と、どこにいても、自分のしたいことを見つけてまっしぐら。納得ゆくまで追求する。
今は、原毛を縮絨することでフェルト化することを知り、その面白さ、奥深さに魅せられてのめり込んでいる。フェルトを挟んだ板のうえを車を行き来させて圧力をかけてみたり、「家の中を電車が走っているようだ」と協力的な夫からさえ苦情がでるほどの機械を買い込んで失敗してみたりと、独学は試行錯誤のくり返し。しかし、こうちさんは、その産みの苦しみさえも、もの作りの楽しさの一部にしてしまっているところが伺える。難しいほどチャレンジのしがいがある、とでもいうように。
こうして生まれたフェルトの帽子たちは、色も形もさまざま。素材も、アルパカとウール、カシミアとウールなどのバリエーションをもち、樫で薫製にして色づけした作品も出展される。今年の冬の装いは、手持ちのスカーフにあう帽子で決めてはいかがでしょう。
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