松林が途切れると、日当たりの良い一体に野の花が咲き乱れている。雨の少ない気候に適応した小さな花弁の花が多い。その花々をカメラで追いかけていると、人気のない林の奥深くに迷い込んでしまう。こんな場所にありがちな捨てられたペットボトルや、空き缶、ゴミも、道中全く見かけることはなかった。旅行者は世界中から訪れているだろうに、ポイ捨てをすることがない。ここでは誰も、自然のままの美しい風景を汚す気持ちになれないのだろう。
アヴィニヨンの北にあるヴィユヌーヴ・ドゥ・アヴィニヨンの古い館をホテルにした庭では、オーナー夫人丹精の薔薇のトンネルに出迎えられた。この庭もそうだが、徹底的に手入れをするのではなく、崩れる寸前のような美しさで留めておく感覚が、プロヴァンスの庭にはある。イングリッシュガーデンの美しさともどこか違う、限りなく本当の自然に溶けこんでゆく庭作りのセンスは彼ら独自のものだ。
ラベンダーで有名なセナンクのノートルダム寺院の前庭には、なだらかな大地に幾筋もの畝にびっしりと健康そうなラベンダーが満開の時期を待っていた。7月には、大地一面が紫に染まるという。ここは経営上手な僧院らしく、ショップには観光客目当ての"僧院グッズ"があふれている。クッキーやヌガー、オリ−ヴオイル、おもちゃ、本、地図などなど。清水寺で、"僧侶が作った柴漬け"が並んでいるようなものだ。でも、オリ−ヴ入りクッキーは長距離ドライヴの空腹を満たしてくれた。
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