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初夏のプロヴァンスから花便り





前回の秋のプロヴァンスのご案内に続いて、初夏のプロヴァンス気分をお伝えしよう。
5月中旬のエクサン・プロヴァンスの空気はからりと乾燥し、いつもそよいでいる風が汗ばむ肌に心地よい。光線は澄んだ大気を射抜いて地上に届き、すでに真夏の激しさを見せ始めている。まさにここは、地中海気候の地。
秋には、一面の紅葉に彩られた葡萄畑の向こうに白く聳えていたあのサンヴィックトワールの山も、今は青々とした新しい緑が中腹まで登っている。ハイウェイを避け、村々をつなぐ小さな道を走る。エニシダと思われるまっ黄色の花が、白い岩肌を隠さんばかりに、山の斜面を被いつくしている。あたりには、えも言われぬ香りが漂っている。

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松林が途切れると、日当たりの良い一体に野の花が咲き乱れている。雨の少ない気候に適応した小さな花弁の花が多い。その花々をカメラで追いかけていると、人気のない林の奥深くに迷い込んでしまう。こんな場所にありがちな捨てられたペットボトルや、空き缶、ゴミも、道中全く見かけることはなかった。旅行者は世界中から訪れているだろうに、ポイ捨てをすることがない。ここでは誰も、自然のままの美しい風景を汚す気持ちになれないのだろう。
アヴィニヨンの北にあるヴィユヌーヴ・ドゥ・アヴィニヨンの古い館をホテルにした庭では、オーナー夫人丹精の薔薇のトンネルに出迎えられた。この庭もそうだが、徹底的に手入れをするのではなく、崩れる寸前のような美しさで留めておく感覚が、プロヴァンスの庭にはある。イングリッシュガーデンの美しさともどこか違う、限りなく本当の自然に溶けこんでゆく庭作りのセンスは彼ら独自のものだ。


ラベンダーで有名なセナンクのノートルダム寺院の前庭には、なだらかな大地に幾筋もの畝にびっしりと健康そうなラベンダーが満開の時期を待っていた。7月には、大地一面が紫に染まるという。ここは経営上手な僧院らしく、ショップには観光客目当ての"僧院グッズ"があふれている。クッキーやヌガー、オリ−ヴオイル、おもちゃ、本、地図などなど。清水寺で、"僧侶が作った柴漬け"が並んでいるようなものだ。でも、オリ−ヴ入りクッキーは長距離ドライヴの空腹を満たしてくれた。

 

 



さて、道中、木々の花にも目を奪われた。やはり、大輪を咲かせるのではなく、小さな花がびっしりついているものが多い。近づくと、蜜蜂が花に頭を突っ込むブンブンという音が聞こえる。岩肌の白茶、杉や松の深緑、プラタナス並木の明るい緑、キラキラと光る葡萄畑の緑、見渡す限りのポピーの赤、そしてエニシダの黄色。初夏のプロヴァンスは色に溢れていた。花々の写真から、南フランスの空気が伝わるでしょうか。

(2003/8 よこやまゆうこ)

風景と花 木の花

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