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展織道楽塩野屋の服部芳和さんを訪ねて


OZONEでの『布づくし・展 日本の布200選』に出展された作り手の工房探訪・その30は、京都の織道楽塩野屋、服部半蔵こと服部芳和さんです。服部さんとは15年来のおつき合いながら、その制作の実態も深く知らぬまま、絹のコーヒーフィルターや身体に良いと勧めてくださる「浄肌衣肌着」、絹の手ぬぐいを頂戴するばかり。着物と洋装のミックススタイルに矢絣の足袋、履き易そうにすり減った下駄で東京を疾駆する服部さんの本業は、織道楽塩野屋14代目頭領。滋賀県甲賀郡塩野村で漢方医をしていた服部喜右衛門が300年程前に西陣で絹織物の機屋を開いて以来の老舗です。2004年には市内千本中立売に小売店をオープン。「柳条縮緬(りゅうじょうちりめん)」と呼ばれる西陣本シボ御召の普及に情熱を傾ける御召プロデューサーは、“着物が売れない時代”にあって、果敢に挑戦をしかけるチャレンジャーです。

 

(写真1)

(写真2)

(写真3)

(写真4)

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(写真6)
  塩野野の「絣御召」を支えるのが西陣で仕事をする15職の職人さんたちです。西陣は確立した分業のプロ集団に支えられています。今回は、個人で友禅染めの着尺や帯を制作する工房とはまったく様相を異にする制作現場を駆け足での見学となりました。

見せて頂いたのは15職中6職。まず、蚕から引いた糸を着物を織るための糸にする「撚糸」の工程。下撚り撚糸工場を経営する78歳の西村泰一さんは、60年間糸を撚ってきました。今では機械の廻る音を聞いただけで微妙な狂いさえわかるそうです。9年前から息子さんが加わり、4名が作業をしています。(写真1)

渡辺長蔵さんがするのは「糊つけ」。甘蔗澱粉と布海苔と米糊を混ぜて御召用の糊を調合するのは、長年のカンと経験がたより。糊をつけるのは糸の保護と、撚りの戻り防止のため。糊つけされた糸は強撚糸にするときの撚り止めとなり、絹糸を強くする役目も果します。(写真2)

池田一雄さんの主宰する工場は「本撚り撚糸」。かつては10人いた職人さんも今は1人。京都でも八丁湿式撚糸機を動かしているのはわずかに2、3軒だそうです。(写真3)

寺井一雄さんは糸からセリシンを取り除く「精練」と「染め」を受け持ちます。指定の色を正確に染めだすのが腕の見せどころ。人間が見分けられる色の数はおよそ1000万色といいますが、おおかたの色は3原色を混ぜるさじ加減でだせるといいます。水を含んだ重たい糸を何度も引き上げて染め重ねる作業には、体格の良い二人の息子さんが加わりました。(写真4)

緯糸に強撚糸を使うことで生じる縮みの風合いを愛でる御召は、着尺の幅を得るために5000本の経糸をかけます。(普通の着尺は1500本程度)。この5000本を均一の張力で巻取るのが「整経」です。沼田靖史さんは、6畳間いっぱいに巨大な整経機を据えつけ、目にも止まらぬ早さで「あぜ」をとってゆきます。最後に千切り(ちきり)に巻きあげて完了。先人の智恵、工夫、改良、習熟の技、そのすべてが凝縮しているような作業です。(写真5)

最後に訪ねたの絣模様に糸を「括る」徳永 弘さん。6反分の糸を括り用大枠に巻き、芯墨と呼ばれる物差の役目をする糸にしたがって括る部分に印をつけ、紙で巻いた上からゴムの紐で硬く括ってゆきます。2色以上の絣の場合は、括り終えた糸の束を専門の染め屋が染め、もどってきたら再び括りの工程をくり返します。徳永さんの仕事はここで終りではありません。5000本の経糸を竹筬に通し、「はしご」と呼ばれる道具を使って糸をずらしながら絣の柄をそろえ、千切りにきっちりと巻取って完了です。こうして整えられた糸は機屋へ運ばれ、緯糸が織り込まれて裂になります。
(写真6)
 
これらの工程を見てくると、15職の職人さんが各自の作業を完璧にこなすことは言うまでもなく、次の工程が楽なようにとの配慮が随所になされています。こうした隠れた配慮をすることも職人気質の一端でしょうか。
 
  プロデューサーとしての服部さんの役目は、まず作りたい柄、色、風合いのイメージを固め、各職人さんに伝えることです。今の人たちに愛されるような御召を作ろう、との共通の目標にむかって15職のチームワークが円滑に進むよう気を配ります。月に一度開いている「本シボ15職の会」では、講師を招いての勉強会や、日本各地での展覧会の結果などが職人さんたちにフィードバックされます。服部さんがお客さまから得た感触が、どこまで職人さんたちに伝わるかは、大切なポイントです。
留守がちな服部さんを支えるのは、京都店を守る石井都子さんと、東京のオペレーションを任されている宮澤巳起代さん。お二人とも着物の似合うしっかり者です。
“着物の売れない時代”を嘆いていても何も始まらない。行動しよう!と自ら東奔西走の服部さん。下駄がすり減る分だけ、「現代の御召」は、女性たちの関心を呼んでゆくことでしょう。“頑張れ!服部半蔵!”
  柳条縮緬制作の詳しい工程が分かりやすく紹介されているサイトがあります。ぜひご覧下さい。
http://www.wanogakkou.com/culture/
030000/030100_shionoya_tubotare.html

塩野屋のサイト:http://www.shiono-ya.co.jp
塩野屋の連絡先:075-461-1995
      
  (2005/6よこやまゆうこ)

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