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『IKKOAN』

『IKKOAN』
著者:水上力+IKKOAN制作委員会
発行者:南木隆助
発行所:茗荷谷一幸庵 
文京区小石川5-3-15
電話:03-5684-6591
ウエブサイト:
http://book.ikkoan.jp

東京・小石川にある和菓子司「一幸庵」の匠・水上 力氏は、和菓子のフロントランナーともいうべき人物。『IKKOAN』は、水上氏が七十二候をテーマに創作した72種の和菓子の本です。堀内誠氏により菓子の質感がしっかり伝わる写真が、味や香までも伝えてくれるようです。
菓子作りの父を持ち、京都で京風菓子の修行をした水上氏。手の平にのるほどの小さな宇宙に、七十二候の湿度や温度や音や形や色などが、菓子素材で独創的に表現されています。氏の文章、例えば、第一候「東風解凍 はるかぜこおりをとく」では、“空気まで凍りつく寒さの中、東から暖かい風が吹き、厚い氷をとかしていく。春霞が空にかかり、風と光をやわらかく変えながら季節は春へと動いていく。春霞がかかったような3色のこなしで粒餡を巻く。上に春霞の焼き印を空押しし、春風に溶けゆく霜の粒子を模した氷餅を散らした。” 「見たて」と「写し」の項では、和菓子つくりに臨む抽象と具象のアプローチが説明されています。和菓子は“茶を飲む”という行為を前提にする存在だと考えていると記す水上氏にとって、茶を旨く感じさせるために消える和菓子とは、「葉隠」に通じるのだそうです。かくも美しく繊細な小宇宙を腹に収めていいものだろうか、とためらわれてしまいそうです。


写真はすべて『IKKOAN』より。


『IKKOAN』の出版までの成り行きもユニーク。幼少から一幸庵の菓子を無類の好物として育った青年が、その菓子を一冊の本にしたいとの情熱をいだき、クラウドファンディングで6、7年をかけて遂に出版に漕ぎつけたという。昨今、趣向をこらした本を出したくても出版社が見つからないとはよく耳にしますが、この本は、新しい出版の可能性を示しているようです。
    (2016/2 よこやまゆうこ)

(C)Copyright 2004 Jomon-sha Inc, All rights reserved.

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