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『彫りの技を生かした漆器つくりの矢沢光広さんを訪ねて』

5月に開かれる『湘南の漆びと・5人展』の出展作家のうち、これまでに三人をご紹介してきました。今回はその4人目をご紹介します。
漆作家としてベテランのキャリアをもつ矢沢光広さんは、鎌倉に工房とショップをお持ちです。鎌倉彫の父のあとは継がず、とはいえ、漆塗りの環境に育ったゆえにか、木を彫り、漆を塗ることをためらいなく仕事に選びました。縄文式土器の造形に魅かれ、日本中のマイナーな出土地までも巡り歩き、日本民藝館や博物館、美術館などを足しげく訪ねる若き日々だったそう。門前の小僧経を読むの喩え通り、師にもつかず公募展にも出さず、ひたすら古いものを見ることで学び、かれこれ50年近く、自己流の漆器作りの道を歩んでこられました。



矢沢さんの目指してきた器は、奇を衒わず使いやすく、使うほどに美しくなり、自由でとらわれない器。例えば、栗材の足付盆。木目を見せる透漆のうえに煤玉(地の粉)で古色をつけ、裏面には三カ所に彫りだした足。乾燥によるわずかな歪みから、お盆がカタカタしてくることがありますが、この3つの足がそれを防いでくれます。本塗は敬遠しがちな若い人にも人気が高く、15年ほども作り続けていらっしゃいます。
漆器の変遷を物語るエピソードを披露して下さいました。矢沢さんが小学生だった1950年代後半、連日、店のレジカウンターには、父親の漆器を手にした人が列をなしたそう。平均的な日本人の暮らしが豊かになり、“漆器のひとつも持ちたい”との欲求が膨らんだ頃の現象でした。そして今、スマートフォンは無理してでも持つけれど、塗椀で朝餉を食べたい、という若者は極めて少数派。こだわりの若者の“漆器へのこだわり”を育てる妙案があるとすれば、作り手とその作品が好き!という熱心なファン=リピーターを一人でも多く獲得することかもしれません。
ご子息も同じ道を進まれ、三代の営みが無理なく続きます。湘南の風のように、良い時代も厳しい時代も浮かれず肩肘張らず、飄々として漆を楽しんでいらっしゃる矢沢さんです。

*展覧会のご案内
『湘南の漆びと・5人展』
と き: 2016年5月14日(土)〜25日(水)月曜休
11:00〜18:00 最終日16時終了
ところ: 工藝サロン梓
〒251-0028 藤沢市本鵠沼5-10-3
0466-25-7770
http://www.azusa-kougei.com


<出展者の紹介>
伏見眞樹:Feature#003
佐藤智洋:SideStory#325
堀田洋二:SideStory#326
矢沢光広:SideStory#329
後藤信治:SideStory#330
    (2016/4 よこやまゆうこ)

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