日野明子さん、職業は「企画卸業」。一人問屋とも呼ばれています。共立女子大で工業デザイナー故秋岡芳夫氏に学んだことが、今の仕事につながりました。秋岡氏は日本のデザインがまだまだ西欧を追っかけ真似することに熱心だった頃、日本人の住いにふさわしい家具や生活用品の開発に携わりました。座高を低くして、ダイニングにもリビングにも使える椅子「あぐらのかける男の椅子」もその一つです。彼の主宰する「モノ・モノ」があったからこそ、私たちは暮らしのなかで、シンプルで美しく且つ便利に暮らすということに気づかされたと思います。
時代が移り、その“運動”とも呼べるような
「モノ・モノ」の活動
は、秋岡氏の遺志を継ぐ若い代表によって運営されています。
そして日野さんは、デパートの家庭用品関連の仕事で目と人脈を養い独立。以来、一人問屋家業を続けていらっしゃいます。
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伝統工芸品として長く続いてきた手しごと、それも、高価な華美なものでなく、日々の暮らしに使える価格の品々を日本各地から選びだし、作り手と使い手の間をつなぐ仕事を、日野さんは天職と考えていらっしゃるようです。その言葉、「
すべて、自分ひとりでつくり上げることをクラフトだと思っている人もいるだろうが、デザインしたものを工場と組んで商品化するクラフトデザイナーもいる。地場の工場の規模だからこそできるモノもあるのだ。」
つまり、ある程度の量産をするためには個人作業では数に限りがあります。制作のパート毎に優れた技をもつ職人が共同作業してこそ、均質の品が各地の店に並ぶ数を生産ことができます。その様子を自分の目で確かめるため、日野さんはもの作りの現場を訪ねることを怠りません。人物を知り、素材を見、作るプロセスを学び、作り手の品物への思いをしっかり受けとめ、それらを使い手に伝える役目を果たすためです。
ある時期から、豊かになったこの国でも使い捨てが流行り、気に入ったものを長く使うという習慣が消えつつありました。日野さんは、上質の日用品を選び、かつそれらを美しく使い込む技を教えなければと思い立ち、『うつわの手帖Ⅰ、Ⅱ』(ラトルズ刊)に続き、『台所道具を一生ものにする手入れ術』(誠文堂新光社)を書き、モノへの愛着の具体的な方法を伝えました。それは民藝の難しい精神論ではなく、竹笊はどう乾かすかとか、鉄鍋の上手な始末とか、漆椀の拭き方とか、暮らしの中で私たちが前の世代から受け継ぐのを忘れていた、ちょっとした知恵のようなものです。
作る人と使う人をつなぐ役目の人が居てこそ、よいものが作り使い続けられてゆくのだと、これまでもこれからも、日野明子さんの仕事にこころからの応援を惜しみません。
2018年1月益子を皮切りに、12月まで沖縄、東京湯島、神楽坂、福岡、六本木、銀座、台北、京都の各地で“日野プロデュース”による展示会が開かれます。詳細は順次
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で案内されるそうです。
(2018/1 よこやまゆうこ)
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