標高1500mにある『八ヶ岳高原音楽堂』は、「'89年毎日芸術賞」や「'89年東京クリエイション大賞環境賞」を受賞した吉村順三設計による250名を容する小さな音楽堂です。
木を多用した六角形の建物は柔らかな音響を生み出し、ぐるりを緑に囲まれた音楽堂は、開設以来、訪れる人に日常を離れた珠玉の時間を提供してきました。
1970年代よりリヒテルを始め、アシュケナージ、スメタナ弦楽四重奏団、キース・ジャレット、ピーター・ゼルキン、ワディム・レーピンらに加え、日本のそうそうたる演奏家たちを毎年迎え、野村万作、長谷川俊太郎ら音楽以外の分野のパーフォーマンスも行われてきました。当初からリヒテルと武満徹を音楽アドバイザーに迎えたという最高のアプローチからも、その志の高さを伺うことができます。
さて、2018年春、スヴァトスラフ・リヒテル没後20年を期して、八ヶ岳山麓の樹齢100年のカラマツを使ったチェンバロが、国内屈指のチェンバロ制作者久保田 彰氏によって完成しました。ヨーロッパバロック音楽を彩るチェンバロは、金色に輝き優雅な装飾で飾られた楽器との印象があるので、塗装を施さず白木のままという意匠にまず驚きました。カラマツの美しい木目を生かしたサイド、蓋の内側はフランスのアトリエに注文したという金箔と枇杷の花のモチーフの装飾。上品で優雅な雰囲気を醸し出しています。チェンバロは繊細な楽器で、温度湿度に敏感といわれていますが、微妙な調整は、演奏者自身がするそうです。
この日のコンサートでは、鎌田茉帆さん演奏のバッハやラモー、クープランの曲目を堪能しました。今夏は8月2日から8月29日まで、毎週月〜金曜日の午後開かれています。(大人1500円、子供700円)、
http://www.yatsugatake.co.jp/event/concert/2018/larch-cembalo-concert/index.html
(2018/8 よこやまゆうこ)
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