長野県諏訪郡には富士見町富士見という住所の、富士山がくっきりと見晴らせるなだらかなスロープが広がっています。明るくて住みやすそうなところです。そこで染色の仕事をする「仕草」の佐渡勝行さんをお訪ねしました。
佐渡さんは都内で着物の反物を注染という技法で染める工場に勤めていたことがあります。昔は染液の廃液をそのまま川に流すことが行われていたので、近くの川が真っ青に染まっていたと言います。そんな作業に馴染めないこともあり、アンチ都会派は脱東京を企て、6年ほど前に長野県に移住してきました。
絵が好きだったので、図案を起こし、白地の木綿の反物に天然藍の濃淡で絵柄をのせた注染の手ぬぐいを作りました。注染は型紙があれば何枚でも同じ図案のものを染めることができる量産に向いた技法です。
もう一つは草木染です。藍、柿渋、胡桃、玉ねぎの皮、タカキビという黍の一種などを染め分け、もやもやとした模様を作り出した新しい感覚の手拭を作っています。布地にもこだわり、普通の手拭の木綿地ではなく、ガーゼと晒の間くらいの上美布と読ぶ肌触りの良い布を使っています。長さは120cmで手拭より少し長く、スカーフとしてとても使いやすい長さです。
首に汗をかく夏場、フロントガラスからの日焼けを防ぎたいドライビング中などにも、シルクのスカーフではちょっと使いにくいし、手拭やタオルでは、野良仕事のおじさんのようで、、、と悩ましいものです。そんな時に、ザブザブ洗えてパッと乾き、見た目は草木染めの渋い色合いと優し肌触り。これは男女を問わず重宝しそうな一品です。
お訪ねした時は、新しくオープンする喫茶付きショールームの内装作業が進行中でした。秋にはオープンの予定です。お料理好きな奥様の簡単なスナックも出したいと考えていらっしゃいます。JR富士見駅から数分の地の利も良いロケーションです。
いっときUターンとかIターンとか言われ、若者が地方を目指した現象がありました。70年代生まれの団塊によく見られるような気がしていますが、大都市や大手企業には全く執着がなく、実に軽やかに転職し、地縁もない地でも気にすることなく住まいを移し、とりあえずの定住の地とし家族を作る、そんなフットワークの良さを感じます。佐渡さんもそのお一人のようです。コロナ禍によって、生き方の選択がまた変わるのかもしれません。
佐渡さんのブログ:
https://profile.ameba.jp/ameba/shigusa-tenugui/
(2020/8 よこやまゆうこ)
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