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<番外編><シリーズ・私のたからもの>『染織作家広沢麗子さんのたからもの:50年間の染織ノート』
こちらでご紹介した広沢麗子さんの宝物は、きっちり記された糸染めのデータ満載のノートブックです。一期一会などと言って、出たとこ勝負の染めをしがちですが、再現するためにはデータが必須。プロの仕事人と言えるでしょうか。
   50年前に織を始めた頃、ある工芸柞家から「糸は自分で染めるべき、そしてまずは染色見本を作ることから始めなさい」とのアドバイスを受けた。しかし、見本作りだけに時間は費やせないと思った私は、作品を作りながら染めた糸を記録し染色ノート作ることにした。いつの間にか化学染料10冊、植物染料14冊となり、サンプル数はそれぞれ2000と1000を超え、作品を創る際のかけがえのない土台となっている。
   私の作品創りにおいて、色は一番大事な要素である。年に2点の大きなタピストリ―を制作するが、春と秋に20色以上の糸染めをする。上皿天秤を使いミリグラムまで正確に量り、濃度を変え、色の混合率を変えて色出してゆく。例えば200gのウール糸に対し、1.0gのレッドで染めれば0.5%の赤色となり、さらに1.0gの黄色を混ぜれば1%の橙色となる。そういう結果を、染めた糸を添えて記録したものが私の「染色ノート」である。化学染料は極めて科学的で、数字が合っていればほとんど同じ色が再現できる。
   1994年から始めた植物染色は季節によっても色が異なるので、媒染剤はもちろん染色した日、採取地なども記録する。植物染料は化学染料と違って計算通りにはいかないが、情緒的で美しい。黒紫色が染まるマツヨイグサを好んで使うが、「染め時」の夏が来るとそわそわしてしまう。身近な植物で染めることの楽しさは格別である。

広沢麗子・湘南
(2022/2 よこやまゆうこ)

(C)Copyright 2004 Jomon-sha Inc, All rights reserved.

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