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今年塗り替えた「ちきりや本店」の看板。
100年以上にわたり大切に掛けられてきたもの
<番外編><シリーズ・私のたからもの>『ちきりや万右衛門七代目 手塚英明さんの宝物は伝統そのもの』
    私の家は代々漆器業を生業としてきた。物心つく頃より箸、椀から始まり、皿や鉢まで、我が家の食器はほとんどが漆器であった。もちろん、座卓等の家具類も漆器である。木曽漆器の産地と言うこともあり、漆器を使う生活は当たり前のこととして育つ環境でもあった。
    松本市の高校へ通い始めた頃より、これが普通ではない、と言うことが薄々解ってきた。私が家業を継ぐことを決めたのは、その頃であろうか。大学に進むと、より一層それが普通ではない、と言うことが解った。私の進むべき道に確信を持てたのは、この時期である。より多くの人に漆器の良さを伝えたいと思うようになった。
    代々受け継がれてきた漆器業を、同じ業態で200年以上続けてきたわけであるが、その時々で大変な苦労があったことと思われる。その都度、多くの方々に支えていただいたことと思う。

1930年万国博覧会(ベルギー・リエージュ) グランプリ賞状とメダル

100年以上に渡り代々大切に使われてきた色漆を作る道具

現在制作している畢生椀、オリジナル技法
    私は常に、伝統とは守るものではなく、その時代の新しい風を吹き込み、次代に継げるものだと思っている。漆器業に携わった当初は、少しでも多くの方々に漆器の良さを伝えられたらと思い、営業のみをやっていた。そんな私も、もっと時代に合った新しい風を吹き込みたく、自ら物を創るようになって30年以上経った。
    代々新しい風を吹き込み続けた「ちきりや」の歴史はもちろん、そんな日々の生活を支えてくれた家族をはじめ、関係する多くの皆様、そして物作りには欠かせない道具たちが「私の宝物」と言うべきものなのだろう。
    時は流れ、そろそろ次代へのバトンタッチの時期が来たように思う。幸いにも「私の宝物」のひとつである娘が意思を受け継いでくれるようである。次代の宝物はどんな新しい風を吹き込み、より多くの漆器ファンのために、日々の生活を送ることであろうか。

手塚英明・木曽平沢

今年の春リニューアルした本店(自宅)の外観
(2022/9 よこやまゆうこ)

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