handmadejapan.com ［日本の手しごと］/Side Story #450：＜番外編＞『Gallery Trax・木村二郎の展覧会を訪ねる』

    こちらでお知らせした山梨県北杜市にあるGallery Traxで開かれている展覧会からのレポートです。
    軽い雨が降ったり、雲のなかに一瞬虹が見えたりと、不安定な空模様の朝。標高1000m、庭には葉を落とし雨を吸って黒々とした幹の桜の古木。前の田圃は、夏には豊かな稲穂が風に揺れていたものが今は茶色一色の刈田。訪れた日は、雨後の澄んだ初冬の空気が、肺腑に新鮮な朝でした。
    寺の敷地にある保育園をリノベイトした空間。光を吸い込むやや汚れたように仕上げられた安心感ある壁の質感が、全体に好ましいやさしさを醸し出しています。
    展示会場には、絞り込んだ点数の作品が並べられ、異なる角度から鑑賞できるようになっています。奥の小部屋には、偶然、二郎氏の実家から見つかったという、彼の少年時代の油絵。他の部屋の壁には、家具創作の発想を辿れるスケッチ画や、家屋、インテリア、家具類の設計図などが掲げられています。
    彼が近隣の畑や野原から掘り出した縄文土器の大小の破片、それらを復元しようと立体に貼り戻された土器も展示されています。彼にとりその作業は、仕事の合間に情熱を傾けた作業であったようです。
    解体された木造民家から回収された古材で家具を作る発想は、決して新しいものではありません。しかし、その多くはちょっと泥臭いものが多いように感じてきました。ところが、二郎作のテーブルや椅子は、全く異なる表情、世界を持っています。それらの佇まいは言葉で説明するよりも、写真が雄弁に語ってくれるでしょう。
    それら全ての二郎ワールドを網羅した感のある記念出版本『RECONSTRUCTION JIRO KIMURA AND GALLERY TRAX』は、インテリアやアートに関心のある人には、是非とも手にしたい存在感ある出版物です。

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（2023/12　よこやまゆうこ）