Home Feature Side Story Shopping About Us
 

  前ページへ


伏見眞樹プロフィール

1957年
  横浜生まれ
1978年
  鎌倉彫訓練校に入校。彫刻・塗りを学ぶ
1980年
  同校卒業。鎌倉彫白日堂に彫り師として入門
2年後、塗りへ転向
1984年
  漆工・佐藤阡朗氏(長野県木曽郡)に師事
汁椀を始めとする生活工芸の漆器づくりを学ぶ
1987年
  独立、埼玉県東松山市に工房設立
1991年
  日本民芸館展、奨励賞受賞(梅文汁椀)
埼玉県熊谷市にて初の個展以後、首都圏を中心に個展多数
1994年
  神奈川県葉山町に移転
2000年
  首都圏を中心に個展多数

伏見眞樹のスプーンとフォークたち



竹の文化にこだわりたいhandmadejapan.comでは、伏見さんの漆器のなかから、まず竹を材料にしたスプーンとフォークを取り上げたい。パスタやカレー、スープ用、デザート用、サラダ用と全部で9種類。大小さまざまあれど、どれも竹と漆の見事なハーモニーをかもし出している。彼はこの竹シリーズを生業のなかの趣味的な部分というが、そのリラックスした気分が、こちらにもちょっと使ってみたいな、という気分を伝えてくる。彫りを専門にしていたころの腕はある。作るほどに竹という素材の性質を知り、その良さを引き出し、7回漆をぬった本格仕上げで作るスプーンとフォークたち。その手順を御覧下さい。

(photo3)竹の節が程よい位置にくるよう交互に入れる

(photo4)形を切り出す前に凹みを彫らないと力が入らない

(photo5)道具は手の延長という。工夫して独自の道具を作るのが職人仕事

(photo6)穴はフォークの切り落とす部分の目印

その仕事は、竹屋さんから肉厚の孟宗竹を入手してよく乾燥させるところから始まる。丸い竹の周辺に型紙でスプーンの形をうつす。(photo3)

斧で注意深く細かい割りを入れてゆく。竹は皮と身とでは大きく堅さが違う。皮は刃物がすぐ切れなくなってしまうほどに堅い。一方、身はさくさくと彫刻刀で削ることができる。次に、割った竹片のスプーンの窪みの部分を彫り出す。試行錯誤のすえに編み出した方法は、横に数本の切れ目を入れておくことだった。指だけで表皮を彫り窪みを作っていたのでは、すぐに刃物が鈍くなってしまうばかりか、親指腱鞘炎になってしまう。竹の表皮に切れ目を入れることにより刃物が身に切り込みやすくなるのだ。表皮をとった身の部分の凹みを厚さ1.5-2.0ミリ程度にまで彫ってゆく。(photo4)

この後、小型のバンドソーで周辺を切り落す。ここでやっとスプーンの形をした竹片が見えてくる。これからは、ただひたすら指の感触を頼りに、彫刻刀を使って表面を削り、凸面にやすりをかける。凹面はやすりも使えないので、漆をかけたとき微妙な凸 凹がでなくなるまで、彫刻刀だけで表面を仕上げる。(photo5)

この後は、ざっくりと刃物の跡が残ったり、素朴な味の残る仕上げを退け、端正でスマートなバランスが得られるまで削る。竹という素朴な素材だからこそ、完璧な仕上げにしたいという。特にこだわるのは、口の中でのスプーンの大きさと唇への感触である。漆特有の柔らかなタッチとスプーンの微妙なカーブの具合が、食べ物の味をいっそう引き立てる。斬新な形だけを優先したもののなかには、食べにくいばかりか、見た目にも汚い食べ方になってしまう、とそこまで考える作り手である。

驚くのはフォーク。昔から柄杓(ひしゃく)、さじに漆を塗ったものは作られてきたが、漆塗りのフォークを見たのは初めてであった。竹というねばりのある素材だからこそできる形だ。それも和菓子用の華奢なものではなく、サラダのなかの新鮮キュウリを刺しても、パスタをぐるぐる巻にしても安定感がある。金属のフォークと同じ感覚で使えるのが嬉しい。

深夜の工房で、幽かに聞こえる湘南の海の音を聞きながら、細いフォークの先を簡単な道具だけで丹念に磨く姿を想像すると、フォークの軽快な印象が騙し絵のようでさえある。神様はきっと単純な手作業の繰り返しの労に対して、完成したときの大きく豊かな充足感を与えられたのだろう。そうでなければ、この仕事は報われない。(photo6)

ショッピングページはこちら 


尺皿、8寸皿、溜塗スープ皿、欅ボール

竹のスプーンとフォークにあわせたい素肌美人の皿もご紹介しよう。尺皿と8寸皿とスープ皿、深鉢の4種類。平たい皿は一器多用である。好物のカレーやスパゲテイを美味しく食べたくて作ったという平皿やスープ皿は、控えめながら、いざというとき必ず役にたってくれる心強い一品である。手持ちの西洋皿を下に敷いて洋風を演出すれば、食卓に一段と華が生まれる。陶磁器やガラスなどの異素材の器と組み合わせると、なおいっそう確かな自己主張をする器たちだ。

 

料理を盛ってみる

国籍を問わずどんな料理にも合う器として、伏見さんの漆器をご紹介する今回の料理は、イタリアンレストラン『アクアパッツァ』南青山店の小嶋正明シェフにお願いした。

直径30cmの尺皿に盛られたのは「美味しい野菜のバーニャカウダ」。木目が透けて見える落ち着いた拭漆が、鮮やかな野菜の色と質感を引出している

8寸皿には「薫製鴨のハンバーグ仕立て、バルサミコソース」。家庭料理なら普通のハンバーグでも、装いはお洒落にきめたい。

スープ皿には「大葉の香りの冷たいフェデリーニたっぷりの緑野菜とからすみ」を盛ってみた。こんもりと盛られた緑のパスタが食欲を呼ぶ一品。

 


次ページへ


次ページへ 
(C)Copyright 2000 Johmon-sha Inc, All rights reserved.