和紙が漉きたいお嫁さん
遠見京美(とみ・きょうみ)さんは、和紙が漉きたくて、十代で金沢から能登半島の根っこに位置する仁行(にぎょう)の郷に嫁いできました。といっても、仁行は有名な和紙産地でもなく、義父となる人が一人で和紙漉きをしていたところでした。妻、嫁、母の三役をこなしながら、義父の手ほどきで紙漉きを習い、義父周作さんが亡くなってからは、その志を継ぎ、今では一家の中心として和紙作りに励んでいます。
そして今、息子和之(かずゆき)さんも、新しい和紙の表現に挑戦しています。Feature004では、独自の紙と灯りを作っている遠見母子を紹介します。
京美さんのことを語る前に、義父である遠見周作さんのことを語らなければなりません。私が初めて遠見家の漉き場を訪ねたとき、彼はすでにセピア色の写真の中で穏やかな笑みをたたえていらっしゃいました。ですから私の周作さんのイメージは、その写真から感じるお人柄と、10年前の季刊誌『銀花』で「紙舗 直」の主宰者坂本 直昭氏が生前の周作氏のことを記す一文からのものです。
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