私に漆器を使う楽しみを教えてくれたのは角 偉三郎さんだ。もう15年くらいになるだろうか。それ以来、角さんの漆器を私は密かに“リトマス試験紙”と思っている。
というのは、食卓で角さんの漆椀のとなりに陶器の皿を置くと、その皿の素性が、すばやくあぶり出されてしまうような気がするのだ。かと思うと、角さんの器はどんなものとも相性がいい。華のある角さんの器が、まわりの器たちを和ませてくれるようなのだ。
『角 偉三郎の漆と書』は、実は、編集者萩原 薫さんが、長い間暖めていた企画である。編集のプロである萩原さんに、安心して身をまかせたような角さんの素顔がある。何度訪れても、またすぐ訪ねたくなる輪島の町の雰囲気も、モノクロ写真からじかに伝わってくる。一冊で何度も美味しい、嬉しい本である。
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