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アメリカの木工芸家
ノーム・サルトリアスさんのアートスプーン



去年の夏、一通のEメールが入った。差出人は、アメリカ、WV(ウエストヴァージニア州)に住む男性で、Feature03(LINK)でご紹介している伏見眞樹さんの竹と漆のスプーンを注文したい、というものだった。何度かのメールのやりとりで、彼もまたスプーンを専門に作る木工クラフトマンであることがわかった。
彼、ノーム・サートリアス(Norm Sartorius)さんは、世界のスプーン類のコレクターでもあり、日本の柄杓や匙に関心があるといって、本などからの写真を送ってきた。それらは、茶道で使う杓であったり、アイヌの彫刻を施した柄杓などであった。探し求めることができた数本の日本の杓と、仕上がった伏見さんのスプーンを送った。もう11月になっていた。品物を受け取ったとのメールに記されていたのは、これらの日本からのスプーンは、家族から彼へのクリスマスプレゼントとして贈られることになっているので、クリスマスまでお預けになっている、というものだった。好い話だと思った。注文品はサイトや添付写真で見てはいるけど、本物はクリスマスまでの辛抱。彼の期待どおりかどうか案じていると、新年早々、“They are all wonderful. The small lacquered spoon is perfect, very beautifully crafted. どれも素晴らしい。漆の小さなスプーンは完璧だ、とても美しく作られている“と書かれたメールが入った。ほっとした。

 
アートとしてのスプーンを作り続けて25年になるノームさんは、木の美しさは宝石に匹敵する、と書いている。スプーンとしての機能を持たないけれど、見たり、触ったり、持っていること自体を楽しむためのスプーン。ワシントンDCにあるスミソニアン博物館郡の一つ、アメリカ美術を集めたレンウイック・ギャラリーの永久コレクションにもなっているそうだ。



彼がクラフトショーに出品すると、来場者から向けられるお決まりの質問、“どうやって使うの?”“単に木を挽いたものなのに、このスプーンは何故1000ドルもするの?”と尋ねられることが多いという。そんな時彼は、“腹を立てたり、苦々しく思ったり、皮肉っぽくなったり、恨めしく思ったりすることなく、寛容な心で辛抱強く、愛情とウイットをもって、子供が、あなたやあなたの労働に対して敬意や理解や価値を見い出してほしいと望むように、一般の人たちを教育しなきゃならない。”とも書いている。 この心境を実践できるには、長い道のりがあったに違いない。

アメリカのクラフト作家たちも、よき理解者を求める努力を続けているようだ。 日本の手作り作家たちは、使い道はわかるけれど、もったいなくて使えない、といわ れることが多いだろう。でも、一度きちんと作られたものの使い勝手のよさや、使い 込んで美しくなることを経験すると、その後はいい加減なものを使いたくなくなる。 そんな経験をするひとが、もっともっと増えればいいと思う。(横山祐子)

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