30年来の友人が待ちに待った本を出した。
滝下嘉弘さんの『民家移築』だ。滝下さんの民家移築の仕事は、30年ほども前、岐阜県のダムに沈むことになった合掌造りの家を、鎌倉源氏山の頂上に移築したしたことに始まる。それ以降、30棟の民家を日本各地ばかりか、ハワイやブラジルにまでも移築している。『民家移築』はそれらの家のなかから特徴的な家を16棟紹介している。
あの長く太い梁を見るだけでも、家を移築するという作業は、男っぽい仕事であると思ってしまうが、一方、暮らしを育んできた空間を、まったく新しい暮らしを入れる器に生きかえさせるという、細やかな心の要る仕事でもあるだろう。滝下さんは“僕は民家というのは、一番大きな民芸品だと思う”という。なるほど、民家も民芸品も愛情を持って使い込めば、使い手の心に応えて美しさを増すところは正に同じだ。
A4サイズ、200点のカラー写真、40枚の図面と、移築時のストーリーが紹介されていて、写真を見ながら読んでいるだけで充分楽しい本だ。(2002/4 よこやまゆうこ)
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