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九州水俣で青竹の民具を作る 井上克彦さん





4年ほど前、熊本の型絵染作家岡村美和さんをお訪ねしたおり、初めて水俣に行ってみることにしました。水俣という町の重たさゆえに、ちょっと緊張したのをおぼえています。
手つかずの自然が残る街道筋に佇んでいたとき、少し離れたところから、何かが手招きしているような気がしました。近づいてみると、招いていたのは軒先いっぱいに懸けられた竹篭たちでした。無類の竹篭好きとしては、目を輝かせて店内に入りました。そして、もっと驚いたことに、奥で仕事をしていた一人の青年がすっと立ち上がり、私たちを迎え、熱心に青竹細工のことについて語り始めたのでした。方言のない言葉使いで、ぜひ竹篭のことを知らせたいとの並々ならぬ熱意が、痛いほど伝わってきました。奥では、親方風の人物が黙々と手を動かしていました。

この青年が、井上克彦さん。大学卒業後、商社に就職したものの何か違うと退職。インドのNGOでボランティアをし、帰国して政府系援助期間に就職するも、そこでも違和感。そのとき「竹篭」に魂を捕られたのです。日本各地を廻り、親方になってくれる人を探し、やっと今の親方が置いてくれることになったというのです。このときは先を急ぐ旅程ゆえ、心を残して去ったのですが、それから彼とのメール交換が始まりました。親方の技には遥かに追いつかないこと、親方と釣りに行くのが何よりの楽しみ、といったことを記してくれました。上京のおりに頂いたくず篭の丁寧なヒゴつくり、隅々の収まりのよさなどは、彼が腕をあげてきたことを推し量るのに充分でした。そして2年もたったころ、独立したとの連絡。さらにホームページ開設の知らせ。夜、ヒゴを削っていた指をキーボードに移し替えてのホームページ作りだったのでしょう。彼の考え方や水俣で青竹篭を作ることの意味などが、写真と文章からしっかり伝わってきます。もっとも地味で経済性の低い青竹工芸を愛し、縁もゆかりもなかった人間が、地元にのこる用の形を残したいと決意していることに、私は感動してしまいます。
進路を決めかねている若者が多い昨今、こんな生き方を選んだ青年がいることをお知らせしたくて、ご本人の許可を得て、井上さんのホームページをリンクします。
http://www16.ocn.ne.jp/~takekago/

(2004/10よこやまゆうこ)



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