『布づくし・展』の出展者を訪ねるシリーズその15は、九州で型絵染をする梅林保乃さんです。博多発福北ゆたか線篠栗駅で降りると、そこは稲が実りの秋を迎える美しい風景が広がっていました。
梅林さんの制作の中心は着尺、帯、のれんです。図柄のモチーフは花。見せて頂いた作品のなかに、花以外の絵を見つけることはありませんでした。梅林さんが花に惹かれるのは、小学校の先生をしながら絵を描いていらした祖父、花の絵を得意とする日本画家の父親の流れを引いているようです。そして、布に染められた花は、まるで友禅のように写実的です。型絵染の特徴は、型の切れのよさにありますが、梅林さんの型絵は、どこまでも優しく、自然に忠実なグラデーションが特徴です。これにもわけがありました。
実は、梅林さんは筑陽学園高等学校でテキスタイルを専攻したあと、京都で5年間も友禅染めの工房に勤めていたキャリアがあります。まだ着物が大いに売れていた頃の話。その会社も大量生産の着物を作っており、梅林さんは、引き染めやぼかしを担当。羽尺(コート地約7m)を一日平均30本、多いときには50本から染めていたといいます。染料を入れたバケツを左手にかけ、右手に持った刷毛でしんしばりした布を中空で引き染めするのは、かなり体力を要します。20代の若さであったからこそ、このきつい作業を苦と思うことなく精進できたのでしょう。
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