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美しい竹林の家 ダーおばさんの綿織物博物館

竹製の小枠に糸巻きをする女性


チェンマイへ小旅行をしました。タラップを降りて、30℃の空気に触れたとたんに、取りついて離れなかった肩凝りが溶けるように消えていました。町中では欧米からの観光客が目につくと思えば、スマトラ沖地震のTSUNAMIで南部海岸沿いのリゾート地を避けた観光客がチェンマイにきているといいます。町の賑わいが皮肉であり痛ましくもありましたが、観光がタイ国にとって重要な収入源であることも確かな現実です。

     

素朴な色に染められた木綿糸
 
チーク材の大きな杼。絣はすべて手括り
     

さまざまな植物染材
  チェンマイから1時間余り走ったところに、 昔ながらの草木染めの木綿工房があると知り訪ねてみました。竹のトンネルを通り抜けると簡単な屋根だけの建物に20台ほどの手織機が並んでいます。正式の名は、パー・ダー・コットン・テキスタイル博物館。セーンダー・バンシットさんという女性が始めたもので、彼女が住まいとしていた建物が博物館になっており、古い生活道具や機織りの道具、染め材となる樹皮、芯材、果実、根などが展示されています。建物や調度品から察するに、当時としてはかなり豊かな暮らしであったことが伺えます。
     

濃茶から黒に近い色
のとれる木の実
 
南洋らしい木の実と染めた糸
     
    パンフレットによれば、彼女は学校で義務教育を受けたことがなく、伯父に読み書きを習った。少女時代から染め織りが好きで、夫の死後、手織機や織りの道具を集め、村の農閑期の主婦たちを募って綿布を織ることを始めました、とあります。1960年代、貧しい農家の主婦の収入源として綿花を育て、身近にある植物から染め、手織りをすることを奨励したのでしょう。

瓶の中で発酵する木の実
 
薄茶色の綿花は在来種、白は外来種。
弓のような道具で綿を叩いて績み易くする
     
    現在、娘のサワニーさんが母の意志を継ぎ、近隣農家の女性たちをを募り、綿花の栽培、糸績み、染め、織りの作業をとりまとめ、ショップの運営にあたっています。タイの女性らしい物静かな風情のサワニーさんに案内され、ゆるやかに過ぎてゆく一時を、観光客のこない木綿の里で過ごすことができたのは幸運でした。
ショップで販売されている布は、どれも静かで控えめで優しい色に染められています。タイシルクの鮮やかで強烈な自己主張の色をタイの色と感じていましたが、タイの庶民の色は、この木綿の色ではないかと思われました。機械で撚りをかけられた木綿とちがい、手績みされた木綿の手ざわりはふわっと優しく、ごわごわした糊気もなく、使いこんだときの風合いはさぞやと思われました。
現在のタイの人件費、物価を考えると、すでに手仕事は採算にあいません。けれども、草木から染められ手織りされた布を愛し、効率優先の生活のなかで、忘れ去られてしまうことのないよう守ろうとしている人が、ささやかながらも、しっかりとその意志を貫いていることを嬉しく感じました。

(2005/2 よこやまゆうこ)

   
ショップとサワニーさん
   

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