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藍建てに魅せられた大塚一男さんの藍と絞りのカンガ


2004年度リビングデザインセンターOZONEでの「布づくし・展 日本の布200選」に藍染め絞り模様のカンガを出展してくださったのは大塚一男さんです。カンガとは、アフリカなどで作られている一枚の身衣のこと。大塚さんのこだわりは、このカンガと絞りと藍染めです。
東京都内で本藍を建てているのも珍しく、板橋の染め場をお訪ねしました。

本藍を建てる瓶は、人が肩まで入ってしまうほどの大きさで、ふつう地中に埋め込まれています。そして、藍が建つための適温を保つ工夫がされています。大塚さんは地中に埋めないでその環境を作る工夫をしています。大きな樽は、カナダからの塩鮭の輸送用と思われる容器。それに電気毛布を巻き、その上から梱包用のエアークッション、その上からビニールシートを巻いています。これで、冬場でも25℃の適温を保つことができるというわけです。
大塚さんは、39歳まで家業である食堂を経営していましたが、大病を患い食堂を畳むことに。
そして、病から立ち直り何をしようかと考えたとき、心に蘇ってきたのが少年時代に見ていた手織りの記憶でした。大塚さんの裂との出会いは、結城市に生まれ育ち、いつも地機で結城紬を織る女性たちを見ていた幼き日の記憶に遡るでしょうとおっしゃいます。

     

すくも
 
藍瓶
     
    葛(くず)を採ってきて繊維をとり、草木染めを始めました。ほどなくして藍に出会ったとき、“あ、これがやりたかったことだ!”と確信的に思ったそうです。池袋のコミュニティカレッジで藍建ての理論と化学建ての講習を受けたものの、どうしても灰汁発酵建てをやりたくて、そこからは試行錯誤の独学。徳島からすくもを取り寄せ建て始めたものの失敗ばかり。悩んだすえに、先輩のところで4日間勉強させてもらってわかったのは、自分流でやっていたときは、心配のあまりいじりすぎたのがいけなかったということ。環境を整えたあとは、藍が自ら建つのを待ってやればいい。朝晩一回ずつ、瓶の底に沈んでいるすくもを丁寧にかき回す、それだけでいいのだと。藍の栄養分として小麦の一番粉の「ふすま」と呼ばれる粉を加えますが、この分量が多すぎても、少なすぎても、さらに加えるタイミングが狂ってもよくないことも学びました。椚(くぬぎ)などの木灰の上澄み液の強さも、発酵に微妙な影響を与えることを経験しました。
     

 
     
    そうしたことが分ってからというもの、すっかり藍の魅力の虜になってしまいました。曰く、“一気に、力強く建てる。うまく建てられたときの藍は「爆発的」に建つ。一度力強く建った藍は最後まで良い状態を維持する。一度も爆発的状態を経ないで建った藍は、藍の成分を十分引き出せないままプスプスとエンコしてしまう。そうすると純度の高い勢いのある藍色に染めあげることができない。”上手に使ってやると一度建てた藍は1年でも持たせることができることもわかりました。
藍を建てる人は、旅にでることもままなりません。朝晩の撹拌を怠れないからです。ここまでの献身と手間を求められても止められないところが、魔力ともいえそうな不思議な魅力が藍にはあるようです。



 
     
    大塚さんは白生地を自分で絞ります。滲んだようなおおらかな絞り模様は、一見、無造作に見えますが、研究のすえの技法だそうです。それは、着物の世界の規則正しい均一な絞りとちがい、激しいリズムや滑らかなメロディがあり、藍の強弱とあいまって、ある種の感情を表現しているような気がします。
大塚さんの近未来の目標は、作品を作りためて発表することです。期が満ちたとき、愛情かけて育てた藍との二重唱のような独創的な絞り染めが生まれることを期待します。
最後に嬉しいお知らせ。大塚さんのところで糸や布の藍染めをお願いできるそうです。
連絡先は、03-3930-8490。

(2005/3 よこやまゆうこ)

   
日につれて濃くなり再び薄くなる藍の色
   

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