2004年度のOZONEでの『布づくし・展 日本の布200選』に参加して下さった村瀬 裕さんを有松町に訪ねました。愛知県の伝統的工芸品としては比較的大きな産地の有松鳴海絞ですが、実情は将来への模索が続いています。 村瀬さんは新商品開発の委員長として、名古屋ヒルトンホテルのロビーに試作品を展示するなど、アピールに熱心です。駆け足で有松の現状を案内していただきました。 絞り染めの歴史は古く、奈良時代から日本でも行われていたとされています。細かな絞りを追求する京絞に対して、有松鳴海絞は、絞り方の多様性が特徴です。100種類以上の絞り方があるといわれ、仕上がりのパターンもバラエティに富んでいます。有松鳴海では、地場産業として栄えた時期が長かったぶんだけ分業体勢が確立したともいえるでしょう。模様を考え、型紙を彫るー布に青花で下絵をつけるー絞る−染める−ほどくー仕上げといった段階ごとに専門の職人が作業し、以前は影師と呼ばれるコーディネーター役が全体をまとめていました。分業が確立したために創作的な自由度が少ないことが、後継者の減少につながったのかもしれません。仕上がりを想像して描いた図案を絞り、染め、糸をほどくときのわくわくする気持ちが味わえないのでは、無理からぬ気がします。
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