2004年の『布づくし・展 日本の布200選』に緯糸にプラチナ糸を使った帯を出展してくださった野口惠美さんを兵庫県西宮市にお訪ねし、野口ワールドを拝見しました。 野口さんは、京友禅の着物や帯、そして独自のデザインの織りの帯を手がけています。作品には、若き日の野口さんがデッサンや絵画の勉強に打ち込んだキャリアが発揮されています。子供のころから絵を描くことが好きで、小磯良平らの指導を受け、関西洋画会の名門二紀展本展では史上最年少の入選で注目を集めてからは、次々と入選をくり返しました。京都芸大を目指して猛特訓を受け試験に臨んだものの、最終日に高熱をだしあえなく不合格。後に石膏デッサンでは首席であったことを聞けば、無念の思いが募ったことでした。このように、画家になっていてもおかしくない才能と実力が、野口さんの友禅の意匠に反映されているのは自然なことかもしれません。
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