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能登半島地震現地レポート
3月25日に発生した能登半島一帯を見舞った震度6強の地震から9ヶ月が経ちました。半年ぶりに訪れた輪島の町の様子、漆に携わる方々の現状レポート、このシリーズの最終回をお届けします。

能登空港から三井町をぬけて輪島市まで20分ほど。この空港のおかげで東京から日帰りもできるほど輪島は近くなりました。もう市内までの道筋で地震の爪痕を見ることはほとんどありません。いまにも時雨れてきそうな空を映した_田(ひつじだ)が続きます。けれども、市内に入ると更地が目立つ一方、以前より工事中の家が多いことにも気づきます。ゆっくりながらも、町は着実に元気をとりもどしつつある印象を持ちました。



地震直後はすっかり人足も途絶えた朝市。折悪しく冷たい雨が降り始めましたが、思っていたよりも人出は多く、7割の回復といわれていることを実感できました。野菜や海産物を売るおばちゃんたちも、さかんに声をかけてくれます。
ブルーシートがオレンジシートに変わったような気がしました。どなたかのアイディアだったのでしょうか。風景に暖かみが増したように思いました。店頭には鰤や鱈が並び、おばちゃんが研ぎ減った出刃包丁で手際よく開いてくれます。乾燥あご(トビウオ)はとても上品な出汁がとれるお気に入りの品。かじめという海藻はもどして煮付けるとほどよい歯ごたえがありメタボ対策の一皿に。地元でコウバコと呼ばれる小さな蟹は、内子と外子を腹いっぱいに抱えて美味。珍しいジネンジョも並んでいましたが、少々高価にて今回は見送り。

大きく傾いでしまった大崎漆器店の外壁も真新しい板壁に張替えられ、お隣のゆべし屋さんも新装開店。でも、大崎家の奥の土蔵はこれから3年がかりの修復とのこと。寒波のくる前に何とか仕事場と住いの部分が回復したという状況。悦子夫人の奮闘の日々はまだしばらくは続きそうです。
悦子夫人の朝市仕込みのお昼をごちそうになりました。漆の器に盛られた輪島の料理は、三ツ星グレメ料理よりもしっくりとお腹に収まりました。近い将来、自宅を開放して、漆の器と能登料理を堪能できる体験レッスンを計画していらっしゃいます。春の山菜、夏のアワビ、秋のきのこ、冬は魚と、豊かで安心で美味しい食材を堪能できそうなプラン、待ちどおしいですね!!
このシリーズを5回にわたりレポートして下さった塩安真一さんのしおやす漆器工房のギャラリー『藹庵 aian』(0768−22−5227)で、可愛い椀を見つけました。透漆(すきうるし)仕上げのうえに飛行機や自動車の模様を色漆で描いた子供用の椀。七五三のお祝いアイテムになりそうです。
去る7月、新宿のリビングデザインセンターOZONEで開かれた『ガンバレ輪島漆器 わじま蔵出し市』に出展した方々も、それぞれの展開が進み、新たな気持ちで家業に制作にと邁進していらっしゃる様子も拝見しました。
蔵出し市に参加された「松本石太郎漆工房」も、築100年という土蔵を解体しましたが、松本さんは長さ4、5m、幅3、40cmのケヤキの梁を救い出し、復興記念の盆などに仕上げました。また、来年3月を目標に、『地酒と漆器の蔵ギャラリー』オープンに向けて“塗師屋の座敷のおもてなし”を楽しんでもらいたいと頑張っています。
そして、従来の流通だけに頼らない道を選ぶ若い力がこの地震をきっかけに伸びてきていることも確認できました。嬉しい限りです。輪島漆器の未来に、こころから声援を送り、このシリーズレポートを終ります。
    (2007/12 よこやまゆうこ)

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