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『PLAIN STRIPE CHECK 無地 縞 格子展レポート』

side story #184でご紹介している染織作家伊田郁子さんが、英国ファ―ナムで開かれている展覧会の様子をレポートして下さいました。パートナーのティム・P―ウイリアムス氏と伊田さんの7年余に及ぶ努力は、主に桐生に残る資料と英国で調査した織物のなかから、無地、縞、格子に限定し、かつ“簡素で美しく、使うことができ、その使用に耐え得るもの”“それ自体が目立ちすぎず、身に付ける人、使う人の心に沁みるようなもの”をテーマに比較対照するとの独創的な発想にもとづき、過去と現在の織物を並列展示するという、意欲的な試みの展覧会となりました。
  2010年3月23日から始まった英国ファーナムでの「Plain Stripe Check」展は、3部門から構成されています。クラフト・スタディー・センター所蔵の英国20世紀の代表的な3人の織物作家、E・メーレー、R・ビールズ、E・ピーコックの作品展示、桐生織塾所蔵のサンプル帖と、ティム・パリー・ウイリアムズと伊田郁子の作品の展示、そしてリサーチしたV&A(ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館)の品々の写真モニター展示です。
準備中から、二つのことが気にかかっていました。一つは、クラフト・スタディー・センター所蔵の歴史的な織物作品と、現代の私たちの作品を一緒に展示して、果たして調和するかどうかということ。もう一つは、私の着尺をそのまま、幅の狭い、長い布として展示をして、英国の人達にどのように見てもらえるかということでした。着尺は、着物に仕立てて着るという目的での布の幅、厚さ、重さ、柔らかさ、ドレープ性などに対する独特の要求があり、使う糸や組織などが狭い範囲に限られた織物です。私の作っている布地も、糸の密度や質感がほとんど全て同じです。それは、最も着易く、見た目にも最良の、同じ質の布地を作るよう努めているからです。違いは、色と縞、格子のデザインだけです。そのことは洋服の素材としての布や、インテリアで用いられる布との大きな違いです。それらの違いを越えて、関心を持って見てもらうことができるのか、少し不安でしたが、幸いどちらも杞憂に終わり、ほっとしています。アーティスト トークの時には、リサーチした多くの作品についてや、私の天然染料に関する専門的な説明にも関わらず、強い興味をもって聞いてもらうことができました。
3月のオープン以来、二度、三度と見に来てくれる方もあり、とても良い手応えがあると、帰国後、展覧会場の担当者が知らせてくれました。
滞在中、北アイルランドのリネンとウェールズのウールの織物のリサーチを行いましたが、私たちがこの展覧会の主旨を説明すると、それぞれの博物館の担当者の眼が輝き、膨大なコレクションの中から、今まであまり光の当たらなかったシンプルなデザインの織物を探し出してくれ、プロジェクト自体に強い関心を示してくれたことには、大変勇気づけられました。
この上は一人でも多くの方が、私たちと同じような眼差しで、時代や地域を越えた美しい織物の数々を見直してくれればと願っています。私たちもそこから多くのことを学び、今後さらに良い作品を制作してゆけるのではないかと考えています。

            桐生にて 伊田郁子
 
    (2010/6 よこやまゆうこ)

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