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『お勧めの一品コーナー』
  『お勧めの一品コーナー』  
数年前、アサヒビール大山崎山荘美術館に版画家・川上澄生の展覧会を見にゆきました。
大山崎山荘美術館は、JR京都駅から在来線山崎駅からほど近い、静かな天王山の中腹に、大正から昭和初期に建てられた建物です。本館 には民芸運動に参加した河井寛次郎、濱田庄治、バーナード・リーチらの作品のほか、古陶磁、家具、染織作品などのコレクションが 展示されています。知る人ぞ知る自然の中の落ち着いた空間は、一日をゆったりと過ごしたいむきには、お勧めの隠れ家のようなところです。

川上澄生は、1895年横浜生れ、22歳のときカナダに渡り、さらにアラスカで缶詰工場の人夫として働くなどしたのち、栃木県宇都宮に帰国。英語教師をしながら木版画を作り始めました。棟方志功が『はつなつの風』と題された川上の木版画に影響されて、洋画から版画に進む決心をしたというエピソードはよく知られています。どの作品からも、この作家の柔らかな心情が伝わってくる展覧会でした。
このとき、ミュジアムショップで『川上澄生とらむぷ絵』(奥野かるた店)と題された一組のトランプを見つけました。これには、彼自身が記した文章が添えられています。


『かるたの繪は現行のものは余り面白くない。所謂西洋のトランプより日本の花合わせの方がづつといい。然し西洋のものは古いものになかなか良いものがあるやうだ。もろん私などの及びもつかぬことであるが、かるた五十三枚の形式に依って作画することは面白いことであると思って、去年の春から着手してやつと半分ほど出来た。「クラブ」は日本的、「スペイド」は支那的、「ダイヤ」は近東的、「ハート」は南蛮的、それぞれ、キング、クイーン、ヂヤックは人物、一はそれぞれの代表的なもの、二は建物、三は鳥、四は虫、五は花、六は樹木、七は魚、八は動物、九は器物、十は船といふやうに取材に變化あらしめることにして居る。ヂヨーカーの代はりは「福助」にしようと思つて居るが、まだ作っては居ない。
私は自分の勝手になる時間が少ないので仕事はなかなか進行しない。然しもう半年はかからないで出来上がるだろうと思つて居る。』
(月刊「工藝」昭和14年5月15日発行号より抜粋)


例えば、一の図は、それぞれ纏、龍、象、一角獣。二の建物には水車や五重塔、三の鳥は鳩や孔雀、四の虫は蜻蛉に蜜蜂に蝶など、五の花は桜や薔薇、六の樹木は松や西洋杉、七の魚には人魚に鯛など、八の動物は蝙蝠や駱駝、九の器物にはお釜やワイン樽、十の船には帆立舟に蒸気船など、十一は鎧兜の若武者や鉄砲を持った兵隊、十二は十二単の女性や王冠を頂く女王様、そして、十三は各地域の王様とおぼしき出立ちの男たち、という具合。最高に愉快なのは、ジョーカーの福助。たいていジョーカーは悪魔的な絵が多いのに、扇を前にかしこまる福助とは愉快!
特にトランプゲームが好きなわけではありませんが、ハーブティーなどの香を楽しみつつ、一人占いをして過ごす何気ない午後の小半時が好きです。 創業90年という東京神田であそびの数々を商う奥野かるた店で求めることができます。
(2011/5 よこやまゆうこ)

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