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『縞帳(しまちょう)』

骨董店は好奇心をかきたてるワンダーランド。昔の人の心、手技、衣食住、職業、富める人、貧しい人の暮らしぶりなどなど、沢山のことが伝わってくるモノにあふれています。最近の掘り出し物は『縞帳』。縞帳とは、主に藍染めされた糸で織られた綿布のはぎれを張り寄せた一冊の帳面のことです。
昔から農家の主婦は畑仕事が終った夜なべに、家族全員のために藍の布を織ったといいます。綿の種を蒔き育て、実を収穫し、績み、紡ぎ、紺屋に染めてもらい、織るという手間ひまかけて一枚の布を作りました。夫にはこんな縞、息子にはこんな縞、娘には、、、と、新しい布を織るたびに縞模様を考えたことでしょう。誰も織ったことのない縞の布を織れることは嫁のひそかな自慢だったのかもしれません。

南青山の古民具もりた(03-3407-4466)のご主人森田さんに伺うと、縞帳のはぎれは、自分が織った布に加えて、他家からもらってきたもの、交換しあって手に入れたものなどを加え、少しでも多くのサンプルを集めようとしたらしい、とのこと。一見似たような縞でも、どれ一つとして同じ模様はありません。茜かスオウで染めたような朱の糸が効果的に使われているもの、藍染めも深い紺色のなかに明るい空色をあしらったものなども見られます。織る前には、縞の意匠を考えながら、何度も手に取り繰られたのでしょう、多くの縞帳が痛んでいます。

ある時、ふと思いついて、この小さな何十枚と張られた帳面をばらし、額装してみました。最初の頁にあった文章は、『尾州大野海音寺従持主文亮文政十一子十月、、、』と読めそうです。骨董店に出ている縞帳のほとんどは明治中期のもと森田さんはおっしゃいますが、この文字が縞帳を作った少し前に書かれた物だとするならば、これは文政年間(1818〜1830)あたりのものである可能性もあります。便利のために作られた手仕事の集積が、アートに変身して床の間を飾るとは痛快です。京都寺町通の「ギャラリー啓」の古裂コレクションは、アメリカポートランドで展覧会が開かれました。襤褸の布に美しさを見いだす人たちがいます。森田さんのお店で縞帳を求めるのは、多くは西欧人というのも、おもしろい現象だと思います。
    (2011/12 よこやまゆうこ)

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