タビーキャット 1892年アメリカのテキスタイルプリント会社から発売され愛され続けているタビーキャットをぬいぐるみに。立体に 仕立てて楽しむこともできる。 |
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果たして、アメリカではどれくらいのキルトが作られたのでしょうか。一人が平均7枚のキルトを持っていたといわれています。当然、来客用のキルトや、結婚用の特別に手の込んだ美しいキルトも作られました。ラグも作られましたが、靴で踏まれる運命のため残っているものは少ないのです。家に必要なものはまずテーブルとベッド、その次の投資はベッドカバーでした。因みに、ジョージ・ワシントンの遺産相続リストにも、ベッド掛け、キルトが記されています。 家を美しくするためにキルトやフックド・ラグが作られた理由は、これらがアメリカを知るための重要な“暮らしに根を下ろす”“美しく暮らす”証でもありました。アメリカが豊かになってからは、キルトもデザインが競われるようになりました。商品として作られたものでありませんが、当時のキルトの良いものは1990年代からほとんど美術館所有か、ヨーロッパのインテリアデザイナーに買われ、国外に出てしまいました。日本の浮世絵や着物の型紙が、大量に国外流出したのと似ています。似ていないことは、日本のアートからインスピレーションを得た西欧人たちが、絵画や建築をはじめ、あらゆる用の美の美術表現に、独自の時代を築く発想の基となったことでしょうか。
『アメリカンキルト事典』(小林恵著 文化出版局1982年)に掲載した500枚のキルトは、現在殆どが美術館に所蔵されています。キルトが見直され、アメリカ人がアメリカに驚いたのは1970年の初めからです。洗濯が難しいこともあり不潔の塊のようで、引っ越し用の家具の保護用に使用されていました。
そして、アメリカ人の血の滲んだキルトが、日本で社会現象をおこしました。女性のもの作りで、キルトほど日本の女性たちの熱を引き起こしたものが、果たして他にあったでしょうか。しかし、残念なことに、発表する情熱はありますが、殆どのキルトは次の発表のために押入れに眠っているのが現状だそうです。
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