2008年4月、イギリス南西部ライム・リージスという小さな美しい海辺の町から、アーティストのデイビッド・ウエスト氏が来日し、30日をかけて日本各地を旅しました。
グレイトブリテン・ササカワ財団の助成事業
として、画家の目で見た日本を描くというプロジェクトです。日本語を一言も話せないのに、何度もローカル列車を乗り継いでの一人旅。辺鄙な地にある宿まで辿り着くまでの苦労など、後で聞けば、いくつかのハプニングもあったよう。
京都では祇園の古い日本旅館に泊まり、行き交う人々を窓辺からスケッチ。ハイライトの一つと予定していた吉野山の桜は、あまりの人の多さに仰天、スシヅメ状態の電車に乗り込むこともできず、お花見は断念。日本人の桜狂いを体験しました。熊野古道では杉の巨木や苔むす石畳に魅了され、沢山のスケッチに残しました。さらに、屋久島から沖縄まで足を延ばしました。
200枚を越えるスケッチの中から、彼は4年をかけて木版画と木彫を制作。それらを発表した地元の画廊での展覧会は大きな反響を呼び、レクチャーでは日本でのさまざまな体験を披露しました。
明治の頃から、外国人による日本見聞記が出版され、今それらを読む私たちにとっても、当時の町の様子、人々の様子などが伺われ、興味深いものとなっています。占領終了後の東京に暮らした、米国ビジネスマン夫人が、女性の目から見た暮らしぶりを記した本を、古書店で見つけ読んだことがあります。今では失われてしまったかのような日本人の美点が、どこでも誰でも普通のこととしてあった時代、庭師や女中さん,運転手ら使用人のまじめで正直で親切な心根に感じ入ったことなどの具体的な記述を興味深く読みました。
最近、ウエスト氏はこの旅行による作品群をウエブサイトにまとめました。木版画、木彫、スケッチをお楽しみ下さい。
ウエブサイトは
こちら
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(2013/4 よこやまゆうこ)
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