30年ほど前に友人から貰い受けたエイの染革でスマートフォン用のポシェットを作りました。これまでも都内下町の老舗袋物メーカーに打診したり、皮工芸作家に尋ねてみたりしましたが、いつもあっさり断られ、そのまま宝の持ち腐れとなっていたエイの革。宝石のような光沢をもつ革はとてもエレガントなので、実用に供しながらも品良いアクセサリーのようなものに仕上げたいと思っていました。
今回、ネットで探し引き受けて下さったのは横須賀の革作家工房『革髭』
(http://kawahige.com)
を主宰する森友弘和さん。HPでは、バッグ、ケース、ベルト、革小物製品などを受注制作するとありました。早速、一回目の打ち合わせ。エイ革の表面のウロコは工業用ミシンでさえも針が折れてしまうほど堅いので、三辺は穴を開けて革紐でかがることに決定。
すぐに牛革でサンプルを作り写真を送って下さり、かがり目の間隔や革紐の太さを決定。こちらは稲荷町にある紐専門店で絹の組紐を入手。その後、何回かイメージの確認メールが行き交いました。途中、試作品を見せていただくために2回目の打ち合わせ。
ほぼイメージを正確に共有できたことで一安心。そこで閃いたのがタッセル。動きにつれて揺れる絹の房を両端につけてくださるようお願いしました。この作業は思いのほかむつかしかったようで、組紐の先端と房の紐を縫い合わせて一体化し、糊で固めてエイ革に固定。結構重いスマホの重量を受けつつ、軽やかに房が揺れるよう工夫して下さいました。繊細な作りに仕上り、長く使えそうな一品となりました。
蛇足。なぜ、スマホ用ポシェットを欲しいと思ったのかというと、車に閉め出され、酷い目にあったからです。地方から東京に戻ろうとしていた真冬の夕刻、バッグやコート一切合財を助手席に放り込み、すぐ戻るつもりでちょっと車を離れて戻ってみると両側のドアともロックされている!キーは助手席に置いたバッグの中。何が起こったのか分からない数秒ののち、事態が飲み込め青ざめました。財布もコートもなく寒風吹き荒ぶなかに佇むことに。不幸中の幸い、常にパンツのポケットに入れているガラ系ケータイに、緊急連絡先が登録してあったので、すぐに助けを呼ぶことができたのでした。教訓その1、地震のときなど、バッグは手から離れてしまうこともあるはず。ケータイはバッグの中ではなく、必ず必ず身につけていること。
(2018/6 よこやまゆうこ)
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