伝統の手作りを追いかけて工房を訪ね、技法や素材、意匠、人となりなどを取材してお知らせしてきましたが、スタートから20年経ち、最近は自然―花、野菜、生き物などを取り上げることが増えてきました。
そこで、今回のテーマも“モグラ”。昨夏から庭中にあの独特の土盛りが急増しています。ある時、佇んでいる足元の土がモコッ!と盛り上がり、次々と土が盛り上がってきました。足下にモグラがいる!と思うと、固まってしまったことがありました。未だ濃厚接触したことはないけれど、どことなく愛嬌のある小動物であるし、駆除したいとは思わないけれど、どこかに移って欲しいものと、移住促進方策を探ることにしました。
そのためには相手の生態研究からと書物を購入。『おもしろ生態とかしこい防ぎ方 モグラ』(農山漁村文化協会発行)。井上雅央・秋山雅世の著。秋山さんのモグラ愛がひしひしと感じられる育成記です。実践的な内容に励まされ、即やってみることに。
まず学んだことは、モグラは100%肉食であること。根菜がかじられるのがモグラの仕業というのは冤罪で、犯人は主にネズミやテンやヤガ類の幼虫などの昆虫。夜盗虫やネキリムシなど害虫の幼虫を食べてもくれるのに、生態が知られていないための誤解があることも分かりました。大好物はミミズ。つるっとスパゲッティを吸い込むように食べるとか。それも頭の方から(見てみたい!)。ムカデに似たヤスデは、エビ煎餅を食べるようにシャリシャリと音を立てて食べるなどは、結構ワイルド。ミミズの代用食としては、牛の赤身ひき肉がベスト。ブタやトリひき肉は見向きもしないと。一日で体重の半分ほどの餌が必要で、餌探し以外はほとんど眠っている。土の下に空気は十分あるのだろうかとか、どのようにして恋の相手と出会うのだろうとか、哺乳類なら授乳もするだろう、などなど、暗い地中での彼らの様子に想像が膨らみます。
さて、指南によると、まずモグラの“生活道”を見極める。土盛りがあるところ全てが生活道ではなく、気まぐれの探餌道も多い。今のところ、生活道でないらしいが穴を見つけたのでアルミ製筒状の罠を設置。さらには、唐辛子を練り込んだ五寸釘状のものを出没エリアに打ち込む。50本入れたところ、庭師さんの感想では、そのあたりに土盛りが減ったと。信じ難きは、塩辛が好物で食べると何故か死ぬという説も。この道50年の樹木医T氏のアドバイスは、庭隅に枯葉を集めてミミズ育成コーナーを作ると、そこをめがけてモグラが集結する。これは実行予定。美食でまるまる太ったモグラたちをどうする?!など、愛するべきか、忌むべきか迷うところの地下の小動物との知恵比べは始まったばかりです。
哀しくて可笑し土竜の春の恋 遊子
(2020/2 よこやまゆうこ)
(C)Copyright 2004 Jomon-sha Inc, All rights reserved.
このホームページに掲載されている記事・写真・図表などの無断転載を禁じます。