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番外編「ニホンミツバチ逃去のこと」
    SideStory#392でお知らせしたニホンミツバチの養蜂がスタートして7ヶ月。初めての夏、秋を経験し、越冬、そして来春の活動を楽しみにしていた矢先、11月7日、逃去しました。

    この7ヶ月間、オオスズメバチやキイロスズメバチの襲来から彼女らを守るため、焼酎+カルピス+酢+水の特製カクテルをトラップの周りの桜に吊り下げて捕獲したり、ニホンミツバチは通れるけれどその他の蜂は目が細かくて通れないというネットで巣箱を包んだり、ミツバチを捕まえて肉球にして喰うキイロスズメバチを電気ラケットで殺したりと、身を呈して外敵から守ることもしました。そのかいあって、群は順調に活動していたのでした。
    そして、10月3日には初めての採蜜を試みました。ワクワクして蓋を取り外したところが、5段重ねの最上段の巣箱には蜜が溜まっておらず、残念ながら採蜜ならず。これは7月、9月の長雨で採蜜に行けないミツバチたちが、幼虫を養い自らも餌として蜜を消費したと想像されます。彼らはそのために採蜜しているのですから、当然なのです。人間はその上前を刎ねよう、としているだけのこと。今年はこの地域一帯がそうだったことを、地元のベテランニホンミツバチ養蜂家から聞きました。
    さて、その逃去とは、何が起こったのかということ。女王蜂とすべての働き蜂が、いっせいに巣箱を捨てて出て行ったのです。蜂たちはさまざまな理由で巣を離れるとされていますが、今回は「スムシ」の蔓延によるもの。
    スムシとは、ツヅリガという蛾の幼虫で、成虫は一年中活動しています。蛾は夜行性ですから、昼間は巣箱の外で待機し、夜になってミツバチが静かになると巣門から中に入り、底板などの隙間に卵を産みつけます。ミツバチにとって蛾は天敵ではないので、侵入されても殺したり追い出したりはしません。
    成虫によって生みつけられた大量の卵は4日で孵化し、幼虫は7日で巣を食い荒らし、10日もすれば巣は崩壊しミツバチは逃去する、との記事を読みました。7ヶ月210日の彼女たちの健気な働きが、たった10日ですべて無になったということです。
    新米養蜂家は、スズメバチに刺される危険をもかえりみず、ネットを被り底板を引き出し、幼虫の駆除を欠かしませんでした。
    10月の採蜜のとき、残った巣の中の蜜が少ないことがわかり、越冬できず餓死するといけないので、養蜂仲間からもらった蜜を絞った後の絞りきれない蜜が残っている巣板を巣箱に入れ給餌していました。でも、これ以上のことはミツバチの群れている巣の内部ではどうすることもできないのです。
    では、巣板を食い荒らされた蜂たちはどうするかというと、もう巣を放棄する以外に方法がありません。巣を出た何千というミツバチがどうなるのか、、、。これが一番気にかかるところですが、冷え始めたこの時期、新しい住処を見つけて営巣するということはなく、花の少ない時期なので集蜜もできません。哀れです、、、。あ~~~悲しい!
    トラップに入ったスズメバチのデータを取り続けてきましたが、7~8月にはその中に大量の蛾が混じっていました。これがツヅリガだったのです。本当の敵は二種類のスズメバチではなく、地味で小さな蛾だったのです。では、蛾の侵入を防ぐにはどうすればいいのか。ミツバチにとって蛾は自然界の昆虫仲間であり、個体への直接的な被害はないので攻撃することはありません。師匠曰く、ミツバチを強勢群にすること。群が元気であればスムシは蔓延る余地がないと。では、強勢群にするにはどうすればいいのかと問えば、できることはやり、あとは運を天に任せる、自然は自然に任せるしかない、と極めてシンプル。養蜂経験7ヶ月では何がわかるわけではないので、するべきことはして、あとはこうべを垂れ、お祈りする他ないようです。こうして、週末養蜂家の初めての養蜂が7ヶ月をもって終わりました。残念なレポートになりました。悔しいです!

    あまりに悔しく、眠れぬ夜につらつら考えていると、最初に分蜂した群が小さな群れであったのではないか、と思うに至りました。女王蜂が引き連れて入る働き蜂の数が少ないということです。一つの巣から2番目3番目の分蜂があった時、最初の分蜂よりも群れは小さい、と書物にありました。
    10月の採蜜の時、you tubeで見るような巣板が正方形の巣箱いっぱいにびっしり作られておらず、1/4~1/3の部分が欠けていて、5段下の底板まで見えたことに違和感を持っていました。群れが小さい→作る巣が小さい→産み付けられる卵が少ない→働き蜂が少ない→弱勢群→スムシが蔓延る、という連鎖だったのではないか、と今は考えています。逃げ出した蜂たちの運命が悲惨でないことを祈るばかりです。
(2020/11 よこやまゆうこ)

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