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『アゲハチョウのこと』
今年は春の訪れが早いように感じました。さまざまな花が例年より早く開花、あっけなく咲き終わり、気候変動をこの目で見るような気がしています。そして、影のような黒蝶が飛び交うのがよく見られるようになっていました。そんな4月22日、サンショウの木が棘のある枝をひょろひょろと伸ばしてきたので数本切って部屋に持ち帰りました。部屋にサンショウの香りが漂うのも悪くないと。花瓶に挿したとき、目前に大きな青虫が1匹! 気づかずにそのまま庭から切ってきたようです。これはこれは~!という思いで、様子を見ることに。子供の頃、始業ベルを聞きながら蝉の羽化を眺めていたことを思い出し、ひょっとするとアゲハチョウの羽化を見られるかもしれない、とワクワクしてきました。

青虫は次々にサンショウの葉をたいらげ、たくさんの黒いフンを落とし、茶色い液体がテーブルクロスに残っていて、意外な生態に、ほ、ほ~~という感じ。二日後、細い糸で枝につながれた緑色の蛹と、その下には脱ぎ捨てた皮でしょうか、フンとは違う薄茶色のものが一つ。

5月の連休に入っても蛹は変化なく、ふと気づくと、心なしか茶色っぽくなり胴回りが太くなったような印象。そろそろ羽化か!!と期待しつつも、部屋を飛び回る蝶を捕まえることを想像すると、何とかカバーをして、羽化を眺めつつ、無事に空に放してやれる方法を考えていました。


5月5日、珍しく6時に目覚め、居間にゆき、蛹は?と見ると、そこには大きな蝶!! え!! 羽化したの?? 今、飛び立ったらどうしよう、、、と大慌てで大きめのゴミ袋を花瓶にかぶせてベランダに。あ~~、もう少し早く目覚めていれば羽化のすべてが見られたのに、、。でも、捕虫網を振り回して捕獲しないですんだことに安堵。やはり、早起きは三文の徳。

風の強いベランダに1時間半、毛深い顔に大きな複眼、毛髪よりも細い6本の足でしっかり私の手にしがみつき、風に煽られながらも羽が完全に乾くまでの時間を共に過ごしました。こちらの躰もすっかり冷え切った頃、手のひらに一滴のおしっこを残し、蝶は青空に向かって飛び立ちました。短い生ながらも子孫を残してくれることを望みながら、満足感に包まれて冷えた躰をコーヒーで温めたのでした。
(2021/5 よこやまゆうこ)

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