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でご紹介した京都・嵯峨にお住いの染織家津田昭子さんは、日本の多様な染織の伝統を受け継ぎ斬新な作品群の登竜門でもある「日本伝統工芸展」や「日本伝統工芸近畿展」が活躍の場です。嵯峨の植物で染めた糸をデザインし、毎回美しいタイトルで作品にかける思いを表現されています。
京都愛宕山のふもと「嵯峨鳥居本」に住んで50年余り、愛宕山の裏側、主人のふるさと宕隂(とういん)の「樒原」に行き来して50年余り。美しい自然のなかで子育てしながらゆっくりと過ごしてきました。
3人目の子供が小学生になるとき、志村ふくみ先生に出会わせていただき、織りの魅力に目覚め人生が変わりました。自然にふれ親しむことで、この地に生きる喜びが大きくなりました。
嵯峨の凜とした空気感、靄がかかるとその重なる色の美しさ、四季折々に見える景色、中でも色に魅せられました。
朝方、鳥居本から二尊院、落柿舎を通り抜け、小倉山に登ります。眼下に桂川、曼陀羅山、双ヶ丘(ならびがおか)、遠くに東山。わが町も足元に広がり、ここでご来光を拝みます。朝陽が町全体を照らしてくれます。毎回、朝の光に感動し健康を祈ります。
若い頃は愛宕山にも登りました。愛宕山は火伏せの神さまで、3歳までにお参りすると一生火事にあわないと言われ、皆、子供を背負って登ります。帰りは月輪寺から降りることもあります。秋の東山を夕陽が照らし、実に美しい時間でした。
お米の花が咲く頃
何年か前、六本木の東京ミッドタウン「21・21」で「米展」を見ましたおり、お米の花の写真を見て、こんなにかわいい花かと感動しました。生まれて初めてのことでした。京都へ帰り、夏の初め、北嵯峨を散歩のおり、お米の白い花に出会いました。可愛い小花からはお米の穂の香りがします。感激いたしました。すぐ近くの鳥居本の小さな田んぼでも、白い花を見つけました。咲いている時期が短いので、気がつかず通り過ぎていたのでしょう。この発見はその後「お米の花が咲く頃」という作品になり、近畿展に入選いたしました。
わが家の小さな畑では藍を育て、藍の生葉染めをしています。春に種を蒔き、7月に1番刈り、秋には種を取る分を残して2番刈りをして染めます。糸にも藍の香りが残り、美しい水色となります。樒原では、梅や桜から色をいただきます。田んぼには臭木(くさぎ)も生えてきました。幹に金網を巻いて鹿よけをしています。よもぎや茜草なども自生していて、ここは植物染料の宝庫です。
嵯峨の四季折々の風情から、植物から色をいただき作品が生まれます。今日まで続けてきておれますのも、いろいろな方にお力をいただいてのおかげと、感謝の気持ちでいっぱいです。
津田昭子・京都
公益社団法人日本工芸会主催『第56回日本伝統工芸染織展』で、津田さんの「琵琶の美」を見ることができます。 会期などは以下のとうり。
と き
:
2022年5月11日(水)~5月16日(月)
10時~19時
ところ
:
日本橋三越店 本館7階催物会場
* 巡回展
:
岡山天満屋(5/18~5/23)
大丸京都店(5/25~5/30)
福岡岩田屋本店(6/1~6/6)
(2022/4 よこやまゆうこ)
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