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<番外編><シリーズ・私のたからもの>『家具作家平井健太さんの宝物:アイルランド留学で贈られた石』
   こちらでご紹介した平井健太さんは、木を飴細工のような曲線にする魔術師です。日本にも曲げわっぱという伝統の木工芸がありますが、平井さんの技法はフリーフォームラミネーション(free form lamination)というものです。宝物はアイルランド留学の時のお話です。
   私の宝物は、石です。手編みの毛糸で包まれているので、何の石なのかはわかりません。この石は、アイルランドでの木工修行時代、修行を終えて日本に帰国する直前に、アイルランド生活中にお世話になった日本人女性Sさんから頂いたものです。
   なんでも、これまでアイルランドで修行をしてきた日本人全員に渡してきたパワーストーンとのことでした。(同じ修行をした日本人は私で4人目です。)私自身は特に信心深いわけでもなく、パワーストーンもパワースポットも、およそこれまでご利益があるとされるモノに興味を持ったことすらなかったのですが、この頂いた石だけは、Sさんの気持ちがはっきりと込められている気がして、なぜか事あるごとに手に取って眺めたり、握ったり、今でも大事なイベントがある時には携行しています。
   Sさんは、私たち夫婦が住んでいたキンセールという小さな港町から、車で10分程度の場所に、スイス人の旦那さんと2匹の猫と一緒に住んでいました。渡愛したばかりの私たちに、アイルランドで生活するうえでの役立つ情報やコツを教えて下さったり、たまに夫婦で食事をごちそうになったり、親と世代が同じということもあり、私自身Sさんに会うと、母を思いだすこともあったりして、アイルランドでの第2の母のような方でした。そして実の母も、アイルランドに移住した当初の私をずっと心配していましたが、Sさんが談笑している写真を見せた途端「なぜか一気に安心した。この人が近くにいるなら大丈夫。」と話していました。

   生まれて初めての海外生活、環境も言葉も仕事も、何もかもがこれまでと違い、移住して3ヶ月ほどは、朝仕事場に行き、与えられた仕事に対し何もできずに、ただ1日立ち尽くして終わってしまう日もありました。自分の技術不足や知識のなさ、そこからくる不安によって限りある材料に手を付けられず、呆然とただ過ぎる時間に不甲斐なさを感じる、とても辛く苦しい時期でした。そんな苦しい期間にも、Sさんは「焦ることはない、今を乗り超えれば必ず上手くいく」と励ましてくれました。
   そんな励ましのおかげもあって、3カ月を過ぎた辺りから、だんだんとできることも増え、生活も少しずつ安定し、アイルランド生活を楽しむことができたと思います。
   初めてアイルランドに降り立った日から、今年で10年が経とうとしています。帰国後はSさんともほとんど連絡を取らなくなってしまい、2年前にメールで近況を伝えたきりになってしまいました。この「わたしの宝物」の執筆依頼を頂いたことを契機に、久しぶりにSさんと連絡を取りたいと思います。
平井健太・奈良県川上村
www.studiojig.com/
展覧会情報
   『MIRRORS』
とき: 2023/2-17~3/5
ところ: ギャラリーSOMEWHERE TOKYO
東京都渋谷区恵比寿南2-7-1
03-6452-2224
(2023/2 よこやまゆうこ)

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