『矢谷左知子の草の布』展
-苧麻と葛の布- のお知らせ
暑中お見舞い申し上げます。今年の暑さは格別ですね。そんな酷暑をものともせず、前回もお知らせしました草で布を編む矢谷左知子さんが個展を開きます。会場は「うつわ 菜の花」です。夏休みの一日、ぶらりと小田原方面へお出かけのことがありましたら、ぜひお立ち寄りのうえ、すがすがしい草の布たちをお愉しみください。
少し長くなりますが、店主高橋さんのことばをお伝えします。
矢谷さんの紹介をしようと思って書かれたものをメモにとり始めていったら、矢谷さんの文章そのままでいい。自分のゆうことなど何もないと思った。素直で、実直で、豪快で、愉快なのです。なによりも生きる姿勢が美しい。
すぐそばに生まれていたのに雑草としてしかみえてこなかった草たちとの新しい出会い。苧麻や葛。イラクサ、ヤブマオ、山カヤ。8年前、伊豆住まいをはじめたお母さんによって目の前の草の糸に出会うことになった矢谷さん。草のいい匂いのする糸。ただそれだけで美しい草の糸たち。
と心が大きく動かされ、いままでの仕事をやめて、草を夏の2ヶ月位の間に一年分を刈り取り、糸にするという重労働をとおして素材にするという。
韓国のはいまでも大事にされ野生で、ごわごわとした感触。日本の苧麻はきめが細やかでしなやか。野生にして繊細さを持つ日本の苧麻。水の質、草にあたる日々の風。6月、草を育む梅雨、そんな季節の変化で草の持ち味がつくられるという。
野生の草のもつ味わい。人の手で管理されることなく自力で生きている夏草たちが糸になった時にみせてくれる清冽な美しさ、言葉に出せないくらい感動したと。
その一方、日本という国は開発や草刈りや除草剤で良いかげんに季節の風情をだしている野草たちに過剰に思われる徹底さで破壊し、丸狩りにし、土をむきだしにしていく。虫も住むことがゆるされず、今や数年のうちに千種をこえる野生植物が絶滅するといわれていると。
そんななか、自生する草を自分の手で刈り取り糸にすることの重要さに、スピリットを感じて、矢谷さんは身をもって立っていらっしゃる。何かが消えゆく時、とてつもない大事なものがたちあがっていく。矢谷さんは苧麻の布のごとく内なる光をしずかにたたえ、自らも愉しまれ、そのことを通じて心ある人達に内なる光のよみがえりをもたらすだろう。
2000年7月吉日 うつわ 菜の花 高橋台一
とき: 2000年8月4日(金)〜8月21日(月)
11:00〜18:00 水曜休
ところ:『うつわ 菜の花』
小田原市南町1-3-12
tel 0465-24-7020