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沖縄工芸旅行



旅の最終日、上原美智子さんの工房を訪ねた。天女の羽衣の制作現場である。運良く一台の機に3.7デニールがかかっていた。か細い糸がふわふわと束ねられ、触ればすぐにももつれてしまいそうだ。下に黒い紙をあてがわないと、糸が機にかかっているのが分からない程に細い。上原さんの作業は、ちょっと民話『鶴の恩返し』の鶴のようなイメージがある。やはり鶴は織っている姿を見せてはくれないのだろうか。





彼女の案内で知念村にある斎場御嶽(セイファウタキ)、神の島久高島の見える浜を巡った。御嶽とは神々が下ってくる聖地のことで、斎場御嶽は数あるウタキのなかでも最高の聖地とされている。うっそうと茂る木々の下には、木の根がびっしり貼りついた大岩があり、その日もユタを頼んで家族のことを祈る女性たちの姿が見えた。ユタはノロよりも庶民的というか、日々の個人的な頼みごとを占ったり祈ったりしてくれる存在だそう。神秘的な雰囲気が強く、気に敏感な人ならきっと何かを感じる場なのだろう。生憎、私は何も感じることなく、神妙にしてその場を辞したのだった。

那覇へ向かう途中、南蛮焼の一の宮 侑さんの工房を訪ねた。沖縄の土は赤かったり、お抹茶色だったり、白っぽかったりと、実に色の出が豊かだ。一の宮さんは、ここと見定めて土地を求め、家族3人で開墾し、家を建て、今は庭の手入れに余念がない。そのかいあって、四阿から見晴らす景色は絶景。海上の灰色の雲から雨が下がり、雨のかたまりがこちらへ向けて動いてくる。ざーーときてくれればと願った雨は途中で消えてしまい、この日も“ぶちくん”だった。でも、ここもまた、天国に近い地である。旅人は沖縄の重い歴史に想いをめぐらすのだけれど、すぐに目の前の太陽と海と心優しい人たちのいるこの地を、天国に近いなどといってしまう。





上原さんの家の近くには、果樹農園がある。パッションフルーツ、パパイア、ドラゴンフルーツ、リーチーなどが、これまた嬉しい産地値段。那覇空港で1個2000円のドラゴンフルーツが300円。(ああ、流通!)木の上で赤く熟したリーチーのジューシーな実は上品で芳醇な香りを放ち、ドラゴンフルーツの紫に近い紅色に、黒ごまのような種をちりばめた果実は、見かけによらずあっさりと淡白だった。

旅の締めくくりは、当然の公設市場。あれもこれもの買物の果て、大荷物を引きずりながら空港へ。 3泊4日の旅は、野性的な自然と共存しながら穏やかな暮らしぶりを守るもの作りの人々の優しさに触れ、何でも食べてみよう精神にこたえてくれる数々の料理を満喫して終了した。
(横山祐子)

ー沖縄工芸旅行 完ー


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