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南フランス滞在記 〜その4〜 あのピカソの町 Vallauris ヴァロリスの陶器


yahoo.comで「ヴァロリス」と検索すると、何と、 221件も出てきた。ということは沢山の人が この地を訪れ、ここで作られている陶器につい てもご存じ、ということ。なら、いまさら、とも考えたが、読み進めば、国立ピカソ美術館が コートダジュール観光のひとつに入ってるため、 ヴァロリスを通りすがるらしい、と判明。ピカソが滞在して陶器を作った町として一躍有名になった町なのだ。
しかし、ピカソは別にしても、ヴァロリス陶器 は魅力があるので、やっぱりご紹介する。そして、ヴァロリスが主催する国際陶芸ビエンナー レもその道の方々には知られており、毎回、日本からの応募も数十人にのぼり、鯉江良二氏を 始め、多くの陶芸家が入選をしている。
南仏便りその2の「ファイアンス陶器」が、やんごとなき方々用の器とすれば、ヴァロリス陶器は庶民用。フランス版民芸の心で作られたものだ。作り方も、型に土を押し付けて成形し、 素焼をしたあと釉薬をかけて焼く。19世紀から 20世紀初頭を中心に、家庭用什器として大量に 作られ、言うところの、地域産業であった。見 けたところ、現在は花柄模様と、無地ものに大別されるようだ。
美術館にある釉を気ままに落としたようなものやマーブル模様の釉はもうこの地では作られていないようだ。

 



 



三代目女性社長のニコルさん

11月初め、プラタナスの黄葉がすっかり茶色に なった旧街道を走って着いたヴァロリスの町は、 観光シーズンが終わったせいか、色褪せ、寒々しく、 空家になった店もちらほら。観光客目当ての陶器店や現代陶芸といったアートっぽい店があるばかり。 国立ピカソ美術館の名にはぐらかされたような感じ を抱きながら、せめて本でもと入った隣接するショップで、店の人からこの地の伝統的な焼物が見られ るところの1つに、Saltalamacchiaサルタラマキアの 店があると聞いて探し当てた。


この店は、設立1920年とうたっているが、シシリー島出身の初代が工房を始めたのは1888年。ニコル さんは、最近日本の雑誌が取材に来たよ、とにこやか。 プロバンスでは、日本の雑誌が取材に来ていないところはない、という印象をもっているので、いっこうに驚かず。
サルタラマキアの食器はすべて無地。スープ用ポット、 コーヒーカップなど、プロヴァンスの色である黄色味 の強い茶色、グリーンを中心に、白、モーヴ、新色の オリーグ色など、使いやすそうな器である。お値段も デイナープレートで2500円くらいとお手ごろ。 残念ながら、日本での扱い店はないとのこと。ご興味 のある方は、www.saltalamacchia.comで通販をしている。




 



とても素朴だったヴァロリス陶器

ヴァロリス陶器についての本から、少し情報を拾ってみると、そもそもこの陶器は日常に使われるもの 以外のものを作っていない。中に釉がかかっている 素焼片手鍋、小さな両耳付保存食用壷、四耳付煮込み 鍋、ミルクポット、蓋付壷、深鍋、蓋付両耳スープ 壷、そして各種サイズの皿やコーヒーカップなど。
しかし、大量に生産されたというわりには、骨董店 で見かけることがまずないのは、焼きが柔らかく、 日常的に使われるものであっため、壊れてしま うことが多かったのだろう。エクサンプロバンスの 骨董店でやっと見つけた1940年代製の8角スー プ皿は、とろりとした釉がいとも乱暴にかけてあり、 いかにも庶民の日常使いを思わせるものであった。現 代の品は小奇麗になっていて味が薄まっているとこ ろは、どこも同じ。ちょっといびつであったり、不 揃いであったりする手作りの自然な味は、電気やガス窯では出ないのだろう。
黄茶の釉のかかった器を見ていて、ふと思い浮かべたのは、東京目黒区の日本民芸館(井の頭線駒場東大前駅下車)で販売している 「Egg Baker エッグベ−カー」というモダンな名前がつけられた皿と手付カップのセット。釉の感 じが実に良く似ている。 民芸館の内海禎子氏にメールで質問すると、この「エッグベ−カー」は、島根県湯町窯のものと。 バーナード・リーチが、1953年初夏、柳宗悦らと窯歩きをした時に指導したものと聞いているとのお返事。何か関係があるかもしれないなどと思っている。ご存知の方がいらしたら、教えて下さい。
(2002/11 よこやまゆうこ)


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