南仏便りその6では、伝統の意匠をオリジナリティ豊かなアートに仕上げて成功している若い女性アーティストをご紹介する。
アヴィニヨンのジョセフ・ヴェルネ通りを通りすがったとき、ふと、小さなショーウインドウに目をとられた。古めかしいようでいてそうでない、汚れているようで美しい、そんな印象のウインドウだ。ン?と目を凝らすと、枯れた草の上に素朴な椅子、その上にはもしゃもしゃとした鳥の巣のようなもの、うえからエレガントなカーブをもつ針金製のペンダントランプがひとつ下がっている。古めかしいレース模様の布を通して赤い光りが懐かしい雰囲気、でも、骨董品ではない。重い扉を押して中ヘ入ると小さなショールームがあり、針金で作られた灯りや、花瓶になるようなものが無造作に置かれていた。
「VOX POPULI民の声」
店の名前はヴォックス・ポピュリ、ラテン語の諺vox
populi vox Dei The voice of the people is the voice of God.「民の声は神の声」からとったと、パスカル・パロンさん。パリのファッションデザイナー養成学校ESMODEで学び、服飾デザイナーとして仕事をしていた。とある日、スタジオでスタンドが必要となり、自分で作ることにした。その時からパスカルさんの人生は、針金に関わることとなった。彼女曰く、“私がこれを選んだわけじゃなく、そうなるようになっていたみたい”。20才の時だった。
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