ミシュランガイドによる”星潰し”を試みた。星無しレストランから3星まで、行く街町、村々で腕自慢のシェフの味を楽しんだ。残念なのは、フラッシュなしで撮ったものは、薄暗いレストランではことごとく手ぶれを起こしていたことだ。ここにあるのは、かろうじて撮れていたもの。
タイヤメーカーのミシュランは秘密裏に調査員を放って、レストランの格付けをしてきた。これが旅行者の判断の目安となってもう久しい。皿と皿の間に時間がかかりすぎるという理由で、星を取り上げられたというレストランもあった。味だけではない、タイミングの良さも、大事なサービスのひとつだ。また、ある2つ星では、初老の紳士が一皿目を終えて席を立った。と見るや、ドアのところまでシェフがとんで出てきて、何やら弁明の様子。紳士は一皿めの料理の出来に文句をいっているらしい。20分ほども問答していただろうか。最後には握手をして紳士は立ち去ったが、2つ星に要求される水準ではない、と判断したら敢然と立ち去る、というのも大した勇気だと感じ入った。それくらい自分の舌を鍛えている、との自信があるのだろう。
おおむね、純観光地のレストランは、外国人の”一見さん”がほとんどであるのに比べ、中くらいの都市になると、地元ビジネス客も大切な顧客であり、リピーターを得るためには味にもサ−ビスにも手が抜けない、というところらしい。ウエイターやソムリエの応対もしかり。外国人の一見さんである我々にも、ブルゴーニュやボルドーの高いワインを勧めるのではなく、地元カーヴの妥当なものを勧める。またある時は、道に迷って行き着いた田舎のレストランが、思いがけず好い味をだしているのに驚愕したこともある。室内、什器などのプレゼンテーションは田舎臭く、たいしてやる気もみられないが、鹿は鹿の、鴨は鴨の旨味をしっかり出しているところは、鄙にも稀な優れものシェフに違いない。
んーー。食の国は奥が深いぞ。
(撮影/文:よこやまゆうこ)
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