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工房探訪その4「上原美智子さんの帯」

 


このサイトでよくご紹介する沖縄の染織作家上原美智子さんも、『布づくし・展 日本の布200選』に出展して下さったお一人です。
琉球の古語で蜻蛉(とんぼ)を意味する「あげずば織」[Link]で知られる上原さんですが、極薄の絹の布に辿り着くまでには、伝統的な沖縄の布の勉強を積んでいます。そして、着尺や帯を織る仕事もしています。今回出展してくださったのは、キビソと呼ばれる絹糸でざっくり織られた経緯絣の帯でした。大らかな絣模様が、南国のリラックスした気分を運んできてくれるような帯です。

 

 


<空>
キビソという素材は初めて見るものでした。これが絹!?と目を見張るほど、絹特有の光沢もなく、手触りもごわごわしています。これは、繭の外側の部分だけを糸にしたもので、蚕が吐いた糸が絡まっている状態のもの。精錬をすると柔らかくなりますが、これは生のまま、未精錬で染めます。地のグレーっぽい色は庭から採集した台湾レンギョの実や枝、花から出た色を鉄媒染したもの。黄色は同じく庭のクチナシの実、朱はラック、黒はヘマチンという染料で染めています。一見、苧麻のような植物素材かと思われる風合いの糸が、絹であることは驚きでした。蚕が吐く一本の細い糸は、さまざまな表情をもって私たちに恵みを分けてくれているかのようです。"蚕さんは偉い!"

 

 



手入れの行き届いた上原さんの庭には、染料になる植物がたくさん植えられています。沖縄の太陽が成長を促し、一年中青々とした葉をつけることも、染めの仕事には好都合です。お庭の、月桃(げっとう)、柘榴(ざくろ)、クロ木などが美しい色として布を染める日を待っているかのようです。前日、石垣島から持ち帰った珍しい植物の苗たちも、庭に植えてもらうのを待って雨に濡れていました。近い将来、上原さんはこの植物たちからも美しい色を取り出して、絹の布に移しかえるのでしょう。

今回の沖縄旅行で印象的だったことのひとつは、一見、やっかいな雑草と思っていた身近な植物が、油炒めすると思いもかけない美味な一品になったり、柔らかな葉や芽はフレッシュなハーブサラダになったことでした。地元の人は良く知っていて、これも食べられます、この草も美味しいです、と教えてくれるのです。早採りのへちまも、炒めるとちょっとぬるぬる感があって、ゴーヤともズッキーニとも違う食感がありました。都会のスーパーマーケットに並んでいる野菜だけの食卓が、代わりばえのしないものに思えてしまったのでした。食材しかり、染めの色しかり。今回の旅では、"植物はすごい!"を納得しました。

(2004/4/26 よこやまゆうこ)


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